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小さき者へ・生れ出づる悩み (新潮文庫)

価格: ¥300
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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やっぱり子供騙しかと思ったが、 ★★★★☆
 語り口調がよい。声を出して朗読すると雰囲気が味わえる。昔の文学はいい。はっきり言って出だしは臭い、と思ったが、さすがは文学として残っている作品だけあって、深い。親父となって子供に語りかけるように話をする。奥底で起こっている悲劇。そして子供の将来を案じる。母親との関係。普段の生活では考えない一こまが区切られた感じである。昔の文学の力強さとは、事件?の一点をとらえて、深く切り込んでいく。心理的にもつらくなってくる。年をとったせいか、ひねくれた視点で見ながら、一点の純粋さに打たれるのた。大人が読む方がドキッとさせられる。
読むたびに涙あふれる‥ ★★★★☆
『小さき者へ』‥
作家が全力で書いた作品は、たとえ短い掌編でも、
心を揺さぶられる感動を伴って迫ってきます。
わずか10分程度で読み切れる掌編ですが
読むたびにあふれる涙を抑えきれません。

不器用だが、力強く、ゆるぎない信念を持った父親の心情を
目の当たりにした時、子どもは親の深い愛情を知り、
胸を熱くするでしょう。そして、まっすぐに生きようとするでしょう。
最後の一行に、全力で子どもに伝えたかった言葉が凝縮されています。

『生まれ出づる悩み』‥
「私」(作者自身)の内面の苦しみが、本木君という青年漁夫の、
絵を描き、芸術を生みだそうとする苦しみに、
共感と希望や羨望を見出していきます。
次の成長へ踏み出す時の葛藤や悩みは、
時代を超えて普遍なんじゃないかな‥と。

大正時代に書かれたとは思えないほど
心にスッと入ってくる文章と
力強いエールで完結されるところに作家の力量が感じられます。

過去に読了。レビューのため再読。
道は開ける ★★★★☆
妻を失い、新しく芸術に生きようとする作家としての覚悟と、残された小さき者たちへの思いを綴った『小さき者へ』。
優れた画の才能をもちながらも、貧しい生活ゆえに漁夫としてしか生きられないといった葛藤の中で生きる若者によせた『生れ出づる悩み』。


「前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。行け。勇んで。小さき者よ」
行け。勇んで。小さき者よ。懊悩しつつ・・・ ★★★★★
佳品『小さき者へ』もよいが、『生まれ出づる悩み』の文章の素晴らしさ!!

こういうのを小説と言うのですな。

有島武郎には、最高傑作であり近代文学の大金字塔である『或る女』が聳え立っており、本書の2編はそれこそ「小さき者」ではあろうが、愛惜措く価わざる佳篇である。こういうのを読み直してみると、最近の多くの作家の短篇がただの作文に思えてくる。

有島のような文章が書けるのであれば、『生まれ出づる悩み』の藝術家的懊悩もまた味わってみたい・・・と思わせる。行け。勇んで。小さき者よ。
行け!君は勇者だ ★★★★☆
『小さき者へ・生れ出づる悩み』です。
北海道を舞台とした有島武郎の代表作二編を収録している、ということになります。
いずれの作品も、一人称……というよりは二人称ですね。
作者が、書簡で相手に語りかける感じ。
「小さき者へ」は病死した妻が残した子供たちへの未来に託すメッセージ。「生れ出づる悩み」は、漁師をしながら絵を描き続ける君に対する、文学者という立場からの羨望と嫉妬の感情。

両作品とも、作者の心境、メッセージが直截で、小説作品としては物語的にどうかと思います。
物語としての面白さを求めるならば、あまり期待はしないでください。
ただやはりストレートな心境なだけに、非常に力強い作品です。
そして両作品に共通していえることは、作者本人については、文学の道にありながら、思うように良い作品を書けているとはいえず、思い悩んでいる姿が率直に描かれていることでしょう。行け!とメッセージを残している作者自らが、自身の苦悩している姿を描くことによって、道の険しさを示しています。
それでも。
勇者は進むのでしょう。未来へ向かって。