イスラム文化圏には
★★★★★
イスラム文化圏にはあまり行ったことがないので、イスラム哲学といわれても、ピンと来ていません。
4大文明の2つが、現在イスラム文化圏にあるのだから、古代文明の遺産を何か引き継いでいるのだろうということを想像しています。
ヨーロッパ南部から、アジア南部まで広がったイスラム文化は、それぞれの地方でどう地元の文化と融合していったのかもよく知らないでいます。
キリスト教が、ギリシャ正教、ローマ正教、イギリス国教会などのように、周辺に行くにしたがって、その原型を保存したまま地元の文化と融合している状況は、説明する資料を見たことがあります。
イスラム文化がどのように、展開していった結果として現在の形があるか、まだよく見えていません。
他の文献にもあたりながら、3回くらい読んだら、また書き直します。
ps.
インド中部でイスラム系住民が多い地域に行ったことがあります。
ホテルに缶詰だったので、イスラム文化に触れることはできませんでした。
興味深い神秘主義的哲学
★★★★★
講演を文字起こししただけの文章のようですが、一読しただけでは内容を把握しきれず
改めて丁寧に読み直すことでやっと分かってきたような気になる本書です。
内容はイスラーム哲学とスーフィズムが合わさってできた神秘主義的哲学について。
200ページ程度と比較的短く書かれており、且つテーマが一つに絞られていて非常にシンプルなものとなっています。が、その一つというのがこれを語り草に今からでも数百年議論が続けられてもよさそうな「存在一性論」。そこに登場する「ファナー」と「バカー」の概念説明が本書のねらいのようであり似たような説明の反復が多多みられますが、この概念をよく理解するには幾度かの反復があってもまだ足りないくらいでしょう。
経験と存在、有限と無限、多者と一者、それらが集一するという極めて矛盾した出来事、そこに続く経験・有限・多者への回帰による新しい世界解釈、これらを構築する哲学を一瞥できるだけでも本書の持つ意義は大きいと思われます。
分かり易い!
★★★★★
この本はイスラムの哲学と神秘主義がどのようにイスラーム神秘主義哲学となったかを紐解いています。
が、しかしこの本で注目すべき点はもう一つ、神秘主義の構造化という話です。
東洋の仏教、道教、一部儒教などの神秘主義を見事に構造化しています。
また、神秘主義という一見あやふやな概念も、極めて明快に論じきっています。
イスラムだけではない、東洋全般に関わる内容の本であるといえるでしょう。
知的神秘主義の世界への誘い
★★★★★
タイトルは「イスラーム哲学の原像」ではあるが、実際には十三世紀に勃興しはじめた、イスラーム神秘主義哲学(イスファーン)、しかもイブン・アラビーという一人の思想家に焦点を当て、その思想の内でも「存在一性論」に特化して論じている。とはいえ、広大なイスラム神秘思想への入門としては、最適な一冊であろう。
中東と 世界との距離
★★★★★
インドネシア勤務となったことで イスラム関係の本を読む必要を覚えた。本書もその一環として手にした。
本書は講演を元にして書かれており 文章は平易だが 中身は流石に容易には理解できない。これは僕が まだ哲学をよむ基礎が出来ていない点と イスラムの素養に欠けているからだと考える次第だ。それでも 二点勉強になった」。
一点目は イスラムの哲学は 欧州の哲学と濃厚な交流を持っていた事だ。僕らから見ると中東と欧州は全く違うと見えるかもしれないが 歴史的に考えると この両者は関係が深いことに気がつく。
実際先日訪問した ヨルダンにはローマの遺跡がはっきりと残っている。また アレクサンドリアの街並みを眺めていると 南欧のそれとの相似に驚いた。
現代はイスラムと西側諸国との対立という「大きな物語」があるが この二つ、特に欧州と中東に通底しているものを踏まえて そんな物語を読み解かないと わからない部分はあるということだと思う。
二点目は著者が イスラム哲学を語るにあたり 「老子」「荘子」などの中国の思想を自由に扱っている事だ。これは中東〜インド〜中国に流れる文化的古層と言えるのかもしれない。
著者は かつて岡倉天心が 同様の問題提起をした点を指摘した上で それを安易に肯定する点には慎重だが 著者の語り口では縦横無尽にそれを踏まえている。
そもそも著者は 大川周明から援助を受けていたことも有名だと聞くが 大川の持っていたインド、中東を含んだ大きなVISIONの一例として 本書があるのかもしれない。
インドネシアというイスラム国に住むことで 今まで手にとる機会がないような本を読む機会を得た。これは人生の醍醐味だ。