本書で一番驚かされるのは、現代の民主主義にインディアンの教えが強く影響しているという事実であろう。「受容」「平等」などの8つの教えを紹介する章では、アメリカ合衆国成立の際にインディアンの社会制度が大きく取り入れられていたことも明かされる。彼らが11世紀ごろ樹立した国家は完全な民主制をとっており、言論の自由、連邦制も存在していた。それが米国建国の立役者であるフランクリンらに多大な影響を与えたというのだ。
もちろん本書はインディアンの自然と調和する、あるがままを受け入れ他者を傷つけない生き方にも触れている。それは経済の発展など物質的なものを重視するあまり、精神面の豊かさを軽んじる傾向のある現代社会にとって、別の方向性を示す貴重な哲学といえるだろう。いや、何も社会のことには限らない。「知識は知恵に勝てない」「奇跡は自分の中にある」など本書に登場するインディアンの警句の数々は、日常生活に行き詰まりを感じた人々の心にも響くだろう。本書には心を癒すという「祈り」CDも付いているので、そちらに耳を傾けリラックスした時間を演出することもできる。(工藤 渉)