発想は至極真っ当、しかし結論は至って斬新
★★★★★
湛山は小国主義という言葉を用い、近代化を遂げた国家が当然のステップの様に進む軍国主義・拡張主義を牽制し、民族自決・相互尊重による地域平和を提案した。また大正デモクラシー末期の政治的混乱に対しては、民衆の暴動は意見を述べる機会と機関が具わっていないために他ならないと断じた。これらの言葉は現代になって古びるばかりかますますリアリティの度を増してゆく。未来志向・大躍進・国民の真の歴史と響きだけは勇ましいスローガンが喧しく跋扈する現状にあって、敗北でも卑屈でも超俗でもない、実利ある道義の道を示していた湛山翁の言葉はいよいよ重みを増してゆく。中学・高校の歴史のテキストとしても読まれるべき一冊である。