卵が好き
★★★★☆
1987年に出た単行本『女のための男の手料理』の解題・文庫化。
もともとサンケイ新聞に連載された62篇のエッセイをまとめたもの。実際に池田さんが料理をつくってみせ、それを写真や記者の文章などともに記事へとまとめていたらしい。そのなかで、池田さんの文章だけをピックアップして一冊にしたのが本書ということになる。写真やレシピがカットされてしまっているのが残念。また、読んでいるだけではちょっと分かりにくい原因となっている。
登場する料理は、実に簡単なものが多い。生卵をパスタにからめただけとか。しかし、美味しそうだ。というのも、文章が巧みだからだ。柔らかくて親しみやすい文体で、ちょっと恥ずかしそうに、遠慮っぽく料理について語ってくれる。また、なんでも美味しそうに食べてくれるところに好感が持てるのだ。
実際に料理するときの参考には、あまりならないかも知れない。しかし、文章を読んでいるだけでお腹が減ってくるような本だ。
おもしろい!
★★★★★
芸術家として有名な池田 満寿夫。
文中で「私は料理好きだが、けっして食通ではない」と書いているように、手早く出来る男の料理を個性ある文体で書いている。
一番簡単なものは「コロンブスの目玉焼き丼」。目玉焼きを丼に載せて、ウスターソースか醤油をかけるだけ。
他にも「トーフステーキ」、「揚げないコロッケ」 「日本人だけのスパゲッティ」などユニークな料理をおもしろく書いている。
凝った料理法を一切用いず、早く簡単に作ることが男の料理だと文中に書いてある通り誰にでも出来る料理しか載ってない。また難しい芸術論等の話は一切なし。
何より一番おもしろいのは作者の人間味が伝わってくること。非常に面白かったです。