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フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))

価格: ¥777
カテゴリ: 文庫
ブランド: 東京創元社
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現代的視点で読み直す価値が大いにある怪奇小説 ★★★★☆

 フランケンシュタインが怪物そのものではなくそれを創造した科学者の名前だということは知っていましたが、この小説は子ども時代に少年少女向けにやさしく書き直した版を読んだきりで、そのストーリーはほとんど記憶からこぼれ落ちていました。
 今回改めて読んで驚いたのは、怪物が思いのほか能弁であり、学習によって知見をきちんと養っていった者であることが描かれているところです。彼は自分を振り返っておのれの寄って立つ場所について深い内省を行う力すら備えているのです。

 そして見えてくるのは、フランケンシュタインの怪物が後のハリウッド映画が繰り返し描いたような根っからの化け物ではないとうこと。見てくれが社会一般の人々と異なるがために、孤独感と疎外感を深めていっただけ。つまり彼の怪物性は決してアプリオリのものではなく、社会の側が彼に働きかけ、植えつけていったものだといえます。
 彼が求めたのは、自分と心の共感を交わすことのできる相手。そんなささやかな望みすらかなわないのです。

 さらにフランケンシュタインの怪物は自らの死を決意した時に、悲しいかなようやくひとつの平安を見出してこう叫ぶのです。
 「太陽も星ももはや見えず、頬に遊ぶ風を感じることもない。光も知覚も意識も失せた、その状態に自分は幸せを見出すのだ。(中略)今は死がたったひとつの慰めだ。罪に穢れ、にがい悔恨に引き裂かれて、死以外のどこに安らぎがある?」(296頁)

 読み終えたとき、私の中でこの怪物と近年のいわれなき無差別殺人の犯人たちとが重なって見えました。
 誰にも理解されず深い孤独感と疎外感を抱いた犯人たち。
 死刑で構わない、死刑になるために人を殺した、と明かす犯人たち。

 殺人に正当性など望むべくもないのですが、あの犯人たちの怪物性がどこから来たのかという問題について、この「フランケンシュタイン」が一筋の道を示しているようでなりません。
孤独なる者の物語 ★★★★★
これは孤独なる者の物語であって、怪物小説ではない。
天才的頭脳を持ちながら、『怪物』を造ってしまったフランケンシュタイン博士。
その醜い容姿の為、誰からも愛されず、自分がいかに人を愛そうにも、それに他人が応えてくれない『怪物』。
そして、この物語の聞き手であるウォルトンも、孤独な面を感じる。
フランケンシュタイン博士に愛されたいが、拒否された怪物が徐々に心までも怪物になっていくが、それは哀しいまでの純粋に孤独で、愛を求めていた心……
デ・ニーロの映画で、「愛も無いのに何故作った?」のキャッチコピー。
これはまさしくこの物語の核心を突く言葉でしょう。
怪物の孤独が、胸に突き刺さる古典的名作です。
れっきとした文学作品 ★★★☆☆
 メアリ・シェリーによる『フランケンシュタイン』は正確には『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』という題名です。これには以下のような意味があります。

 プロメテウスとはギリシアにおける神であり、人間に火を教えたかどで主神ゼウスによって縛められ、生きながらにして鳥にその体を啄ばまれることとなった者です。無力なはずの人間に本来神にしか用い得ない「火」を授けたことは、人間を神にとっての脅威とした恐るべき所業だったのです。
 つまり、ヴィクター・フランケンシュタイン(しばしば指摘されますが、フランケンシュタインは怪物を生み出した博士の名前で、怪物には名はありません)は宗教的に禁忌であった人間の創造を行った点で、現代(といっても今から二百年近く前ですが)において古のプロメテウスと似た役割を担ったということです。そんな彼の運命は哀しく、愛する者を失い苦悩にさいなまれ、罰というにはあまりに過酷な経験をすることになります。
 フランケンシュタインの名を一気に有名にしたアメリカ映画の影響で「造られた者の哀しみ」ばかりが押し出されますが、前述のとおりこの小説は「造った者の哀しみ」の方がより強烈に描かれています。
 また、19世紀前半に書かれたこの小説は手紙形式で、まさに小説の見本と言える作品のため、怪奇小説のみならず小説の技巧を学ぶ際にもしばしば言及される作品でもあります。若干読みにくいかもしれませんが、怪物の台詞(寡黙な印象がありますがけっこう饒舌です)は孤独の悲哀と絶望とに満ちており、多分に見る価値があります。気になった方はぜひ読んでみてください。
深い話だ・・ ★★★★☆
「人間は科学を通じてどこまで神の領域に近づけるのか?
そしてその科学の進歩は人間にとって幸福をもたらすのか?」
この小説は現代人に対してこの命題を突きつけているのではないだろうか?
生命の創造という神の摂理に反するともいえる所業に成功したフランケンシュタイン。しかし成功と引き換えにどうしようもない破滅に向かっていく。
現代科学においてはDNAの組み替え、クローン生物の創造といった事はもはや不可能ではない。しかしそれによる弊害も既に出てきている。
19世紀に書かれた小説ではあるが21世紀を生きる我々が真剣に考えるべきテーマを暗示してくれている小説である。
「フランシュタイン」を単なるホラー物、恐怖物だと思っている方には是非おすすめ。

ちなみにロバート・デ・ニーロが怪物役を演じている映画も秀逸。
フランケンシュタイン ★★★★★
新しい生命の創造という神の領域に挑戦したフランケンシュタイン博士と生み出されてしまった生命の葛藤と悲しみにあふれた作品である。フランケンシュタインというととかくホラー映画を思い浮かべてしまうが、その原点となったこの作品にはホラー的色彩よりも全編を通じて語られる苦悩と悲しみが色濃く最後には涙してしまうような作品になっている。ホラー好きな方には物足りないかも知らないが、ひとつのヒューマンドラマとして読んでいただきたい一冊である。