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できる社員は「やり過ごす」 (日経ビジネス人文庫)

価格: ¥630
カテゴリ: 文庫
ブランド: 日本経済新聞社
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役所や大企業を外からしか知らない人にはよいかもしれないが… ★★☆☆☆
調査や分析に裏付けられた主張ではなくて,非常にまとまりの悪いエッセイである.書き方が雑で曖昧で整合性もないので,速読がやりにくく,じっくり読むほどの中身があるわけでもない.

内容はというと,上司の指示を無視する(やりすごす)ことがけっこう重要であり,やりすごしによって組織が回る,ということが書かれている.根本的な部分として,「上司がアホであることに問題がある」のではなく「上司を無視しない部下に問題がある」という態度が気に入らない.著者はそういう部類の人なのだろうか.面白い事例の紹介は所々にあるけど,分析とよべる内容はありません.立場や職位や権限や給料が上の者ほど責任をとっているという,妙な仮定のもとに書いている印象を受けもします.その程度なので,評者のような,ある程度大きな組織を中から見た経験のある人にとっては得るものは少ないでしょう.役所や大きな会社を部外者としてしか知らない人や極端なダメ上司にとっては目から鱗かもしれないけど.

余談だが,著者は東京大学の経済学研究科の教授らしい.著者の言う「経済学的な発想」が半可通の言う経済学と同じなのはなぜだろう.大学における管理職(教授)をネタとして取り上げていないのはなぜだろう.不思議である.
未来派野郎 ★★★★★
欧米人と比較すると、なぜ日本人が彼らより未来を志向する傾向にあるのかわかりませんが、
これが経営の秘訣だというのには頷けます。
人という複雑さを持つ個が集団を構成する社会にあって、理論的で緻密な戦略は役に立たず、
むしろ、こんな方向性をもっていこうというような未来を志向する大雑把な戦略である方が、
会社はうまく回るのかもしれません。
そして社員としては、職務評価を上げるべく現状にやきもきするより、
自分の目指す未来を思考する態度で仕事に臨むのが最善かもしれない。
現状は、逆なのですが。
常識と思われていたことが覆る ★★★★★
虚妄の成果主義など、経済学者の視点から物事を書いている
著者による、社員の分析結果とその考察

内容はそんなに固い内容ではなくて、できる社員とは
「やり過ごす」社員であることを統計結果から述べています。
ならば、やり過ごされた内容は、係長などが、「尻ぬぐい」や
「泥をかぶって」行っています。
 仕事の満足度と、退職志望は、「見通し」という説明変数で
解説できることを述べています。がらっと変わって
囚人のジレンマを持ち出し、実社会での囚人のジレンマは
協調行動が生き残るためのKeyであることを述べています。
 最後の章は、経営者と経営ということでまとめています。

最後の章は別として、良くできた本です。多くの事項が
頭の中で考えたことと実際の乖離について、うまく説明を
つけています。
ぜひ、MBAなどで頭でっかちになりがちな人も含めて
読んでみる価値のある本ではないかとおもいます。
成果主義をぶっつぶして日本文化の会社を取り戻そう ★★★★★
 できる社員は「やり過ごす」、、、。ふざけた題名だ。しかし読んでみると大変良くできた本だ。軽い本かと思って油断して読み始めると、最終的には意外にアカデミックな内容だと気づく。

 できる社員は「やり過ごす」。それは会社を支える中間管理職が、出版当時は係長を指しているが、今で言うとリーダーとかマネージャとかの肩書きの人たちが、部長クラスの上司からの無理難題を適当に優先度を付けて受け流しているからこそ、会社がうまく回っていることを指している。それが上手くできる社員が優秀と見なされて昇進していく日本式年功制度が日本には一番似合っているとのことだ。

 成果主義や年俸制なんていずれ崩壊する。日本人は欧米人の経済理論なんてなじまない。未来を信じて、部下や職場のために助け合って尻ぬぐいをする係長や、経営理論なんて知らずに現場や客先を走り回る経営陣が日本企業の強さなんだと1996年に出版し、ほら当たっただろうと2002年に文庫化している。同じようなことを言っている人がいたなあと当たってみたら、「虚妄の成果主義」を書いた人だったのね。どうりで。
「世の中は変わってしまった」では済まされない ★★★★☆
「やり過ごす」ということは現実問題としてある意味大切なことです.上司や企画部門から降ってくるオーダーを一々まじめに対応していては体が一つでは足りないという話はよくあります.そしてその「やり過ごし」を尻ぬぐいする人がいるというのもまた現実です.

本書では,この「尻ぬぐい」をする人がいるからこそ会社が回っていくとしています.そして,未来への見通しがあるからこそ尻ぬぐいのような役目も社員はやっていけるのだと.言っていることは間違ってはいないと思いますが,本書の理論のとおりだとするとこれからの日本の企業はあぶないですね.経済や会社の発展はなかなか見込みにくく,年功序列の仕組みが崩れた今,自分の将来すら見通せない状況です.また,成果主義や目標管理評価によって「尻ぬぐい」をすることの本当の価値が見失われているのではないでしょうか.

「世の中は変わってしまった」の一言では片付けられないものがあるということを改めて感じます.