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侍 (新潮文庫)

価格: ¥740
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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「侍」と「神父」 ★★★☆☆
基本的に史実を基にした(!)小説です、どの程度まで史実なのか?は分かりませんが、それでも凄い事件を扱った小説です。

東北のある藩に使える下級武士の「侍」が藩主からの命令で外国のノベスパニヤ(メキシコ!)に使節として任命されて海外に渡航する話しです。日本の東北から、太平洋を渡って一路アカプルコを目指す旅が始まります。私はローマにこの少し前の時代に日本人の子供がやはり使節として向かっているのは知っていましたが、この太平洋を横断してメキシコと交易をしようとしていた事実(しかも伊達政宗の命令)はびっくりしました。読み終えてからネットでも調べて見ましたが事実のようです。通辞(通訳)としてキリスト教徒ベラスコ(スペイン人の神父)が間に立っています。ベラスコ神父は日本にキリスト教をもっと布教させたい、そして自分がその指導者として、という野心を隠し持っています。藩主は交易を、ベラスコは布教を、それぞれが思惑を持っていますが、「侍」はただ役目を果たすだけです。そんな「侍」と「ベラスコ」の双方の視点から交互に描いた苦難の旅の過程と、それぞれの信念と、思想と、信仰の物語です。


この当時の太平洋横断がいかに危険なものであったかを考えると、またその役目についても、侍従関係の身分差別の厳しい時代の出来事と考えると、非常に難しい立場に立たされて選択肢の無い「侍」と、交易を許可させる代わりにキリスト教の布教を認めさせ、さらに自分がその導き手にふさわしいと考える策士「ベラスコ」の交互に変わる視点から様々な対比が見られます。「侍」の立場や置かれている状況の厳しさ、またその上での侍、武士というしきたりというか制度の辛さ、その窮屈さに意味を見出す日本的なものと、ベラスコ神父のいう布教の裏に隠された自身(もしくはそうとは認められない虚栄心のようなもの)の欲望を透かすような、それでいて交渉することで打開を図る西洋的なもの、年代的にも地理的にも、そして思想的にもあらゆる意味で違う2人の心の動きを丁寧にその旅路に重ねることでゆっくりと理解できるそれぞれの立場。もちろん簡単にどちらが良くて、どちらが悪いとは言えない「そういうもの」として受け入れられるような言い回しと臨場感がとても不思議なほど並立しています。



それでいて結末はまさに壮絶、もちろんその旅路も非常に苦しく、長いものです。その結果のすさまじさに、受け手はきっと何かを感じ取ると思います。「侍」と「神父」の両方に、それぞれの結末が待っています。


歴史的事実に興味のある方、あるいは伝統的日本人が出会った西洋の信仰というものに興味のある方にオススメします。
忠実な信仰心 ★★★★★
この本は本当の宗教とはどういうものかを考えさせられる本です。遠藤周作はキリスト教ですが、本当の宗教というのは見かけがキリスト教だとか、仏教だとかが分かるものではなく、人間の心からの信仰だと感じました。日本人という容易に他宗教に関心を持たない民族でさえ、心から認識したキリストの言葉には、かなわないのだと気付かされました。本の中の時代のからすでに、キリスト教を所属しているものの中には、忠実に世界にキリストの信仰を広めようとするのではなく、富や名声などの元にキリスト教がある時代だったことも垣間見える小説だど感じます。
信仰と忠義故に人は苦しむ ★★★★★
連れて行った宣教師には強烈な野望が
そして連れて行かれた侍には望郷の念が
そして侍は南米の惨劇とスペイン・ローマでの政治的な暗闘を目撃し
故郷に帰ってきても憂鬱な日々を過ごすことになる
日本にはキリスト教が行き渡らない風土があるっていうのが
主人公の宣教師とそれに反対する宣教師から語られる
そういう日本の風土へのとまどいと疎外感みたいなのが
著者の日本社会とキリスト教へのとまどいなのかなあ、と
とりあえずノーベル文学賞をもらわなかった、という事実は逆に言えば
遠藤周作への最大の賛辞と評価なんじゃないのかなあ
キリシタンを思う ★★★★☆
「反逆」同様”人間”を温かく見守る遠藤さんならではの心に響く時代小説だが、この作品でのキリスト教ほど私の心の中に深く染み入ったものはかつてなかった。宗教の事にはうとい私にもその必然性の程がよく分かり、キリスト教みのならず「宗教」というものの重要性を再認識できる大変勉強になる作品だった。
この小説を読んでいくうちに、第二次世界大戦中、上司の命令でアメリカ兵の捕虜を殺害しようとした徴兵が、後日東京裁判で死刑となった「私は貝になりたい」という物語を思い出した。
そんな時代 ★★★★☆
日本侍のかつての姿・・きっと名も知れずにたくさん
存在したであろう、この長谷倉のような侍の生き様に
この小説を通じて触れることができたのは、とても
貴重な体験のように思われた。

狭い日本の、さらに狭い狭い土地で、
つつましく従順に生きてきた長谷倉に課せられた使命・・。
海を渡り、ローマ法王にお目通りをするという、
大きく苦難を伴う旅・・。

そして、共に旅し、案内役となる「ベラスコ」という
野心あふれる宣教師。
手柄を上げ、日本の司教となれるのか?
生々しいベラスコの心の内、感情がリアルだった。

宗教の意味とは・・??

仏教とキリスト教・・相反する思想。
キリスト教へ帰依しなければお役目は果たせない・・
しかしそれは、祖先や残してきた家族や仲間を裏切る
行為となってしまわないか?

長い旅路の末に待ち構える運命は、
「そんな時代なのだ」と割り切れるものなのか?

とても重みのある作品だと思う。