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ワイルド・スワン(下)

価格: ¥1,835
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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女性たちの凄まじい歴史経験 ★★★★★
十年ほど前だろうか。NHKで松嶋菜々子が祖母、母、そして娘と、激動の20世紀日本を生きた三代の女性を好演した「百年の物語」という名ドラマがあった。本書はまさにその中国バージョンだと感じる。本書は、著者ユン・チアンが1909年生まれの祖母、31年生まれの母、そして52年生まれの自分自身という三代の女性の家族史を、激動の中国現代史の枠組みに位置づけつつ叙述したものである。下巻では1965年に始まる文化大革命から著者がイギリス留学へ旅立つ78年までを描いている。献身的に革命に勤しんできた父母が文化大革命の前に裏切られ、迫害の憂き目に会う。家族を襲う抑圧的な日々。人々の多様な死。想像を絶する文化大革命の実態には戦慄を禁じえない。絶対的権力の前に人間というものの醜悪な側面がこれでもかと露になる一方で、中には愚直に信念を貫く者、権力に一見迎合しつつも面従腹背し著者の一家を助ける者など、文革期における人間の多様な生き様が著者ら家族の物語の中に象徴的に集約されている観がある。単なる個人的な家族史ではなく、祖母や母、そして著者自身の経験を通して、女性たちにとっての近現代史を浮かび上がらせる本書には読み始めると一気に引き込まれてしまう。
一気に読みました ★★★★☆
友人の勧めで購読しました。
私たちの知らない中国を見たようで、驚きと衝撃の本でした。
恵まれるって何だろう ★★★★★
 知識階級の両親のもとに生まれ、不自由ない生活から、一転奈落の底へ。
事実であるだけに、恐ろしい逆シンデレラストーリー。

 恵まれている、とされる人がいる。何にだろう。
家柄に?両親に?容姿に?仕事に?収入に?
どれも一過性の幸運でしかないのに。

 祖母、母、著者と、三代に亘って描き出される中国。
激しい潮流の中で、個人はあまりにも無力だ。
最期まで公平であろうとする父の、拷問により生まれた狂気には、涙を禁じえない。

 国外へ脱出できただけ、著者は恵まれているという人もあろう。
だがそこには当然、家族との別離がある。それくらいは想像できる。
そして自由に発言できる国で、著者はこの作品をものしたのだ。
それを読めることが、出版禁止などの措置を取られない国に生まれたことが、恵まれていると思う。
これも一過性かもしれないが。

 ネットに溢れるアジア蔑視の表現を見る度に、なんとも言えない心持ちになる。
漢字を伝えてくれた事だけでも、私にとって中国は特別な国だ。
本が読めるのは、中国のお陰だと思っている。
文字は尊いと思っているので、決して足蹴にしない。
アジアを蔑み、欧米を礼賛する日本人は、未だ「名誉白人」のつもりなのだろうか。

 一人の女性が、長い歴史を持つ国に生まれ、懸命に生き抜いた。
いつまでも心に残る半生の記録だ。どうか幸せになってほしい。
迫力満点 中国本国で発禁処分の世界のベストセラー ★★★★★
 著者の祖母の歩む人生を画策する曾祖父の誕生する1894年から始まって、著者がイギリスに留学する1978年までの100年近くの中国の内情が、著者の祖母、母、本人の人生を中心に、時間を追いながら詳細に描かれています。盛り込まれた膨大な情報は量、質共に圧倒的です。地名、人名、日時もはっきりとしていて、描写もつい最近のことを思い出して書いているように生き生きしています。
 中国の文化や習慣、体制についても中国の内側から外側に向けて解りやすく説明されています。視点は公平で潤色や身贔屓の感はありません。
 中国本土では発売禁止ですが、本土で発売されないものは、香港、台湾で入手することができるそうで、私の中国人の友人は、この本を読んで良書と評し「書いてあることは全て事実だし、現中国政府は文化大革命は失敗だったと認めているし、なぜこの本を発売禁止にするのか理解できない。」と言っていました。著者の母国中国で、母国語中国語で出版されないのは残念ですが、英語で書かれてイギリスで発売されたからこそ、瞬く間に世界のベストセラーになり得たのではないかと思います。中国政府も国内に制限をかけることはできても、世界は統制できません。「本土で発売禁止」のスキャンダルが話題を呼び、売上に拍車をかけ、この処分によって読者の中国に対する印象が良くならないことは間違いないと思います。
共産主義がわかる ★★★★★
下巻は文化大革命から、毛沢東が消えるまで、著者自身の経験を主軸に書かれている。

学生時代に習った「共産主義」「人民公社」「文化大革命」であるが、この本を読むまで実際の共産主義社会での暮らしというものはただの非効率な机上の空論の犠牲になった社会という程度にしか捉えていなかった。かつては多くの人々を熱狂させ、勇気付けた共産主義が、私的な怨念を晴らす道具として利用され、個人を破滅に追い込む格好の思想にもなり得るのだというのが、本書を通じていくつもの実例として物語に出てくる。共産主義に限らす、イデオロギーと言うものの弱点がよくわかる。

知識人が追放され、教育機関が機能しなくなり、子が親を密告するような時代でさえ、礼節をわきまえた行動と家族愛によって健康な自我を保つことができるのだということも教えてくれる。

このようなことがつい最近までお隣で起こっていたとは。人間の理性や倫理観はかくも簡単に国家によって統制できるものなのか。上巻にも劣らず、驚愕の事実が次々と明るみになる。このような時代を生き延びてもなお、その傷跡を残したまま現代社会に大国として勢力を拡大している中国のこれからを思うと、心中穏やかではない。

共産主義ではなくとも、イデオロギーを利用することによって社会や国を弾圧するという構図は現代でも見られる。人間という動物はなかなか進歩しないのだと実感する。