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芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

価格: ¥420
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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妄想を繰り広げられるのも才能 ★★★☆☆
 大江健三郎は「万延元年のフットボール」なんかは凄いと思うけど、その他の作品は格別好きでもありません。「飼育」なんかはまあまあな方です。「洪水はわが魂に及び」は嫌いな方です。「洪水」なんかは、思いこみで書いてる感じがするからです。自分で思いこんでいることを現実と区別していないというやり方は、意識的なのか、実際的に効果的なのかどうか。「個人的な体験」は話の変化が乏しいし終わり方が納得できない。「新しい人よ眼ざめよ」はわりとグロなところが少なくて、全体的に澄み切った感じがして、まあ好感の持てる方です。
 この「芽むしり仔撃ち」だけど、こういうプロットだったら、現在の作家だったらもう少し取材して、もっとその取材を生かしたリアリティ描写に力を注ぐでしょう。しかるに、本作はどうも作者の少年体験をもとにして妄想を展開したという感じです。まあ、デビューしたばかりだったわけだから仕方ないとも言えるし、こう妄想で原稿を埋めるというのも、溢れる才能なのかもしれません。
 話の内容は、暗中にも少々光ありというようなものです。構成は、先に言ったこともあってやや生硬というか変化に乏しいようなところもあるけど、文章はつねに独特な熱を、奇妙な執念深さを持った感じです。
 「万延元年」にいたって作者は自分の存在の根拠とはじめて本格的に向き合うと言われますが、すでに「飼育」や本作ではそのはしりが確認できるわけです。
 大江健三郎の小説にはどこか読者を試すところがあります。それはしばしば嫌味な感じがあります。批評家に言わせれば、それが壮絶な精神の戦いとも言われますが、私はあまり好きにはなれません、正直。それでもそれなりに読み甲斐はあるし、この作者のうねうねする文体には、芸術的なものがあります。
「海辺のカフカ」と読み比べてみては? ★★★★☆
 作者の処女長編。「左翼的」「難解」というイメージが強い大江作品だが、この作品は読みやすく、本人も楽しんで書いたようだ。

 終戦直前の東北の山村で疫病が発生し、大人達は村を逃げ出し、封鎖してしまう。そこに取り残された感化院の少年達、脱走兵、朝鮮人の少年達が作る共同体の高揚と、その崩壊を描いた作品。やたらホモセクシャルな描写が挿入されるのと、朝鮮人少年と主人公達の友情がちょっと理想的過ぎるのが気になるので、そこで星ひとつ減点したけれど、それ以外は「集団としての日本人」のダメなところがよく描かれていると思う。50年前の作品だけど、全然古くないのはそのへんに理由があると思います。

 なお、村上春樹「海辺のカフカ」を読んだ時、大江作品を多少意識した設定になっていることが面白かったのですが、主人公が山の中で暮らす共同体の「外」のイメージが強烈なこの作品と、逆にぼんやりしている「海辺のカフカ」の違いは興味深いですね。
体感したような気分になった ★★★★★
こんなに自分の五感が、活字に乗せられていくのを感じた事はないかもしれません。
閉じ込められた小屋の中での小便の匂い、病気で死んだ動物達が山積みされている光景と、誰も語らないけれど蔓延するのだろうという恐怖、干し魚と野菜と米で作った雑炊の味。

最初から最後まで、ずっと怒りながら読んでいました。閉鎖された環境や、人が人を殺すのが珍しくない時代には、人間同士のルールはこんなにもねじ曲がってしまうのか。

主人公の少年達は子供であるが故のたくましさも持っているけれど、子供であるが故に、どうしていいかわからず大人を見てどうしても安堵してしまう面もある。その度に、騙されるな、もう信じるな、と思っていました。
文学はこれほど面白いのか! ★★★★★
19年も前のことなのに、
読み終わったときの興奮を
今でもありありと思い出すことができる。

文学はこれほど面白いのか!と震えるような気持ちで思った。

純文学の面白さを堪能したい方に、
ぜひオススメしたい。

大江文学を読破しようとお考えの方も、
まずはこの1冊からどうぞ。
大江文学の入門書としてもオススメ。
完成度の高さに感嘆 ★★★★★
大戦末期、感化院の少年たちは山奥の村へ疎開させられるが、そこで疫病が発生したため、
少年たちは村人達から見棄てられ、山奥に閉じ込められる。
疎外された少年たちは、朝鮮人の少年、疫病で母を失った少女、山狩りから逃れた脱走兵らと隔離された村の中での束の間の自由生活を獲得し、厳しい戦時下での不思議な理想郷を実現したかに思えたが・・・
少年達は大人たちの身勝手な都合で束縛されたり、見棄てられたり、また時には懐柔させられようとする。
そして、村の大人たちの狡猾さ、残酷さ、理不尽さが強烈に印象に残る。
これは、戦争という狂気によって作られたものなのか、それとも利己的な人間本来の姿なのだろうか。
私は、戦時中に少年時代を過ごした大江氏が、戦時中に感じた大人たちへの怒りにも思えたのだが、どうだろうか。
ちなみに本書は大江氏が23歳の時に発表された処女長編であり、その完成度の高さに感嘆した。