いつか映画化される日を願って。。
★★★☆☆
インド人&ビルマ人のカップルとその一族が、ビルマ、インド、マレー、英米と、英語圏を目一杯移動しながら紡ぐ一大家族ドラマ。英国によるビルマの王都・マンダレーの陥落から、ミャンマーにおける民主化運動の時代まで、歴史に翻弄されながらも登場人物達は、懸命に愛し合い、働き、戦い、そして死んでいく。。
壮大な時空間を舞台にした恋物語としても読み取れる一方で、大英帝国全盛〜崩壊後において、インド/ビルマ人達が新たなアイデンティティを模索するポスト・コロニアル・ストーリーとして読むことも可能です。でも、決して頭でっかちにならない味付け具合が、読ませ上手な作家だと思いました。(個人的には、もっとそれぞれの登場人物の内面とアイデンティティの模索がじっくり描かれた方が読み応えがあったので、星を減点。)
文学的技巧の妙味は無い代わりに、シンプルにドラマの面白さを追求した大衆作品です。ミャンマー国内で外国資本の映画撮影許可が降りる日はまだ遠そうだけど、もしそんな日が来たなら、例えば「宋家の三姉妹」みたいな感じの一大娯楽映画になるかもしれません。装丁の美しさもオススメ。
影の主役はビルマ
★★★★★
ビルマ王家の侍女ドリー、インドの孤児ラージクマールのビルマでの運命的な出会いと20年以上たってのインドでの再会。そして、運命的な再会をアレンジするドリーの親友、インド人官僚の妻ウマ。この3者と、その家族、子、孫までが入り交じっての大河ドラマ。最初は、ドリーとラージクマールの恋物語りかと思っていたが、、、。
この本を通じて、ビルマ王家がイギリスに追われ、インドに亡命したこと、そして、最近のアウンサンスーチーさんまでの流れまで、初めて知ったかもしれない。私は、ビルマは、”ビルマの竪琴”に描かれたことくらいしか知らなかった。3人と彼らの家族の生死、生活が、ビルマの現代史を語っている。この本の主役は、”ビルマというか、ミャンマー”そのものだと思う。