文体はTVでみる本人そのもの。3人の男の間で揺れる女性の話だが、頭の回転が速く、速すぎるがゆえそれを隠すがごとくユーモラスに仕上げ、女性特有のロマンティックな恋愛小説にはなっていないし、どちらかといえば女性の仮面をかぶってはいるが男性的な文章だ。が、女性である特典を活かしての題材選び。表題作の次に収載されている「喰えない話」は様々なダイエットに果敢に挑む独身女性の話。りんごダイエットを始め甘いものとお酒だけをとるダイエットなど、本当に作者が試みたかも?と描写に真実味がある。
表題作は芥川賞受賞作であるが、この当時はこういった頭のいい女の人の文体がもてはやされていたのかもしれない。ちょっと鼻につくが、読み終えた後は頭の体操をしたみたいに、少し回転が速くなっているように感じた。
強いて言えば文体は林真理子さんを思わせる感じですが、読み終わって「ようし、元気がでた!」というより、本から顔を上げて現実が続く・・みたいなネットリ感があります。
背負い水では同棲、同性愛を盛り込む30歳前後の女性の恋愛物ですが、他3編はダイエットの話、食べ物の話、そして雑誌社の話と、設定は変わります。
私は高校の時に読みましたが、時がたった今の方が主人公女性の年齢に近づいたからか、より楽しめます。
心情描写や物の描写がうまく、ずっと心に残って「これが主人公の気持ちか」などと日常に萩野ワールドが入り込んでくるのが後遺症かもしれません。