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杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)

価格: ¥562
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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「杳子は深い谷底に一人で座っていた。」神経を病む女子大生 〈杳子) との、山中での異様な出会いに始まる、孤独で斬新な愛の世界……。現代の青春を浮き彫りにする芥川賞受賞作『杳子』。都会に住まう若い夫婦の日常の周辺にひろがる深淵を巧緻な筆に描く『妻隠』。卓抜な感性と濃密な筆致で生の深い感覚に分け入り、現代文学の新地平を切り拓いた著者の代表作二編を収録する。
〈宙づり〉という孤独 ★★★★☆
《おい、わかったよ。君はそんな風に躯をないがしろにするもんだから、自分のありかがはっきりしなくなるんだよ。だから、行きたいところにも、一人で行けないんだ》
 しかしそれは口に出さずに、彼は杳子を右腕の下に包んでやる。重さの感じがすこしも腕に伝わってこなかった。(『杳子』より)

 ひとはけっして一人でたたずんでいるときに孤独を発見するわけじゃない。自分とむきあう相手がいる、けれどその相手に融けこむでもない、といって相手を拒み去るでもない。そのように自他の釣り合いが宙づりなままにされるとき、ひとは相手とのあいだに横たわる無限に広い名もなき空間をうつらうつらと漂ってその途方もなさに暮れ、仕方なしにその場を孤独と名づける。名づけずとも感じ取っている。感じずともその身はすでに侵されている。杳子と出会った彼も、おそらく――。
 『杳子』も『妻隠』も、ともに二人の男女の閉ざされた世界を描いている。しかしどうやらそのアクセントは「二人の男女の恋愛」にではなく、「世界の/からの閉ざされ」に置かれているようだ。個人的にはこのような、自閉しあう関係とでも呼べばいいだろうか、そういう関係にすこし惹かれる。
「内向の世代」の真打ち ★★★★★
 戦後第一世代の作家として著名な古井由吉の出世作。この世代の中では彼が最も「内向の世代」にぴったりな作品をつくりあげているが、特に「杳子」は神経を病んだ女子大生とそれゆえに彼女に惹かれてゆくという主人公の関係を描いた作品なので、余計にその感が強い。しかし、ひとむかし前の作品との違いは、「心理主義」では書かれていないことだ。むしろふたりのやり取りや外的な状況の描写を通じてふたりの心理を浮かび上がらせているという手法が新鮮な印象を与えている。結末が予定調和的にならないのも、このふたりの関係と著者の視点から言っても、ある程度予想のつくことだと思われる。
不安 ★★★★★
読んでいる途中で自分の顔が強張っていくのを感じた。
ヒステリーとはまた違うものを抱えている女。
ページを繰るたびに私自身が不安にかられる。
流石は30年前の芥川賞。
ヒスでも狂気でもない女を描くことによって読者を狂わせる。
此岸から彼岸を眺める ★★★★★
二つとも、著者の原点となるような作品。
不可解な女、それを観察しながら追い詰める、もしくは逃げられる男。
彼の足場は此岸にあり、確固としているようだが、女という不可思議に出会うと足場が砂にさらわれるように崩れていく。
しかし、それも一時の夢で、理解できた、という瞬間を掴んだときには、彼女は理解不能の彼岸(狂気)へと移行している。

もしくは、彼が彼女を意識的に彼岸に追いやる事で、普段の生活に戻っていく、そんなパターンが垣間見える2作品。

感情をぐらぐら揺さぶる力。 ★★★★☆
収録されている2作ともレベルの高い小説です。とくに『杳子』は作者の特徴を非常によく表しており、登場人物の精神状態の不安定さが、より深く読者をストーリーに引き込みます。読者の感情をぐらぐら揺さぶる力をもった小説だと思います。