名作ぞろい、一度は読むべし
★★★★★
SFの古典的な作品は、例外なくレビューが少ないんですな。読むの当たり前と思って放っておくと、最近の若いもんは手にとらないかもしれないとの危惧から、ちょっと書いておきたい。ブラッドベリの短編集としては、「10月はたそがれの国」の次にお勧めである。時代を経ても、面白さは変わらないと思う。後からじわじわときいてくる怖い話もあるので、いろいろなものが受け入れられる時期に読んでおく方がいいと思う。
作者の豊かな想像力が表れた作品
★★★☆☆
俺の大好きな推理漫画家・加藤元浩が完結させている作品『ロケットマン』の最初の事件で題名が出てきた本である。漫画では『RはロケットのR(原題:R IS FOR ROCKET)』というタイトルで紹介されていたが、実際は『ウは宇宙船のウ』という時代を感じさせる邦題だ。
はじめは、一人の青年が宇宙飛行士を目指す、あるいは、最初のロケット開発に携わるなどで宇宙に行きたいという夢をひたむきに追いかけるSFより現代小説に近い長編小説なのかと思っていたが、読んでみるとSFの短編集だった。
題名に現れている通り(というか、ブラッドベリ自体がSF詩人らしいのだが)、あまり宇宙船の詳細は描かれず、違う星での生活や、宇宙飛行士の家族の心情などのほうに焦点を当てている。
各短編の設定はなかなか面白く、「意思を持った星」や「太陽が近すぎて人々の寿命が8日間しかない星」など、作者の想像力がよく現れた話が多い。今では『バック・トゥ・ザ・ヒューチャー』などで有名になったタイムパラドックスの論理とカオス理論を彷彿とさせる話も出てくる。
しかし悲しいかな、実際古い作品だから仕方ないのだが、言い回しが不自然なところが多かったし、文章的に「明らかになんだかおかしいけど、とりあえず直訳しておくか」という雰囲気を持つ箇所が随所に現れている。この辺が訳本の難しいところだ。
珠玉のベストSF短編集
★★★★★
レイ・ブラッドベリのベストSF短編集で、SFに限らず、これからいろいろな物語を読もうとしている人にはぜひおすすめしたい本です。SFの舞台を使いながらも、様々な物語が収められていて、空想力と情感豊かな世界が広がっています。最初の「「ウ」は宇宙船の略号さ」で、作者が登場人物の少年を通じて、これから空想の世界の冒険に乗り出そうよ、と読者に呼びかけて、豊穣の短編群の宇宙・時間旅行に出発です。素っ気無い本書のタイトルからはわからない、玉手箱のような世界が待っています。優れた作品の多いブラッドベリの短編集の中にあってベスト・オブ・ベスト的な印象もある本書ですが、構成の良さもあるのか、本書を読んでから他の短編集を読んでも、なお本書独自の存在感を感じます。また一方、SF映画など映像作品も多い昨今にあって、できれば、文章から空想する喜びを感じることができる若い読者でいる間に、読んでほしい感じもあります。ギフトにしやすいような装丁の本書があってもよいと思うのです。
のめり込めます...
★★★★★
この中に収録されている短編の1つが映画化されるということで、読んでみました。
映画化される当の作品「雷のとどろくような声」は、設定は面白いのですが、事件のきっかけとなる出来事が、ちょっとお粗末で、終わり方も物足りなかったので、映画ではその辺りが面白く脚色されていることを期待します。
他の短編は、面白いものが沢山ありました。
「この地には虎数匹おれり」「霜と炎」などは特に面白くて、読んだ後、いつまでも心に残り、気がつくとその余韻に浸っている自分がいました。
久しぶりに、本の中の世界にのめり込んで、もっと読みたい!もっと読みたい!と強く願う作品に出会いました。
怪奇小説ファンに
★★★★★
ファンタジックな作品が中心でホラーはないのですが、一つ、
ホラー小説を禁書にした社会を舞台にした作品が含まれています。
禁書とし列挙されている作者とタイトルが忘れ難く、以来ホラー
小説を読み続けていますが、挙げられた作品はいずれも名作ばかり
です。ブラッドベリのホラー・アンソロジー企画案と言えるもの
かもしれません。ホラー小説への興味を形成してくれた上でも
忘れ難い一書です。