マズローの人間学
★★★★★
「リビドー」のフロイトを第1の、「集合的無意識」のユングを第2の心理学者とするなら、A.H.マズローは第3の心理学者である。マズローと聞いて多くの人がまず思い浮かべるのは、「マズローのピラミッド」だろう。彼は人間の欲求には段階があるとして5段階欲求モデルを提唱した。下からそれぞれ1.生理的欲求、2.安全の欲求、3.所属と愛の欲求、4.承認の欲求、5.自己実現の欲求である。マズローによれば、人間の欲求はこのように低次から高次へと移行する性質を持つ。欲求充足理論はこの本においても中心を占めており、3章〜8章で詳しく述べられている。
しかし、本文中のマズローの興味はそれだけにとどまらず多彩な分野に及んでいる。例えば、彼は科学における傾向を「問題中心的傾向」と「手段中心的傾向」に分け、手段中心的傾向によって的確さ、洗練されたもの、技術、装置などを当然のこととして強調すると、一般に問題や創造性のもつ意義、重要性がしばしば軽視される結果になると警鐘を鳴らしている[18]。また別の箇所では、人間のもつ破壊性は愛の同一視が欠如していることが原因であると推測している[182]。
全体を通してマズローはリアリスティックであり謙虚である。そこには目を見張るような論理の飛躍は存在しない。けれども、冷徹な観察者としてのマズローは所々で確かな存在感を放っている。
この本のタイトル「人間性の心理学」は、そのままマズロー自身の人間性の奥深さでもある。
欲求段階説をちゃんと理解しよう!
★★★★☆
マズローの欲求段階説は有名ですが、なんとなく疑問を持っていたので本書を手にとりました。
興味本位で読み始めましたが、正直なところ本書をきちんと理解するには相応の心理学や社会学
の知識がないことには難しいと思います。
フロイト、ユング、フロムなどなど様々な学者の名前が引き合いに出され、解説が進んでいく
ためそれらの知識的背景がなくてはならないでしょう。
とはいえ、基本的欲求については、主に3章から6章あたりを読めば、より高次の欲求の発生の
仕方、順番を越えて高次の欲求を発生する例外、欲求と動機付けの関係など、巷で言われる
ピラミッド以上のことを理解することができます。
自己実現については、後半の何章かで詳しく書かれていますが、ここは一度読んだだけではよく
わかりませんでしたが。。
興味だけで、通読するにはやや専門的過ぎるかもしれませんが、気になる章を読むだけでも十分
に面白い本だとは思います。
ずいぶん分厚い本
★★★☆☆
個人的には、自己実現的な人の話がおもしろかったです。
私は、中谷彰宏氏が好きで本読んでますが、まさにこの自己実現的な人の像とおもしろいくらいかぶってます。
この本は、欲求を通して自己実現的な人の分析は載ってますが、頭だけわかっていても無意味です。
本を読んで感動した人には、実践として中谷彰宏氏の本をオススメします。
「欲求」の持つ本質的な意味。すなわち人間には自発的に 「成長」 を志向する上位の欲求= 「成長欲求」 があるという事実に迫った画期的な書
★★★★★
神経症を始めとする人間心理の病理的側面の研究に基礎を置いた精神分析学派と、動物実験を踏まえて「刺激/反応」という人間行動の表層的な現象にばかり目を向けていた行動主義に対して、高度に健全な人格の研究に焦点を当て人間の成長の可能性を追求したのである。
その主張するところは「もし人間が基本的欲求に満たされながら成長するならば、心理的にますます健康になり、成長の高次の段階― 『自己実現』 の段階にいたる」というものである。
人間性心理学の最大の特徴は、人間の欲求を肯定し、それに階層性を見出したことにある。
これがよく知られた「欲求階層論」である。
生理的欲求に始まる欲求階層は、成長の過程を経て 「自己実現」 欲求にいたり、そこまで行き着くと利己性と利他性は矛盾を生まず統合され得るという。
また、人間には無限の可能性が潜在しており、本来は自発的に成長を志向する 「成長欲求」 が生得的に備わっているとされる。
「悪」 や 「病理」 の問題に対してはそれが、基本的欲求 (生理的欲求、安全欲求、所属欲求、承認欲求) が満たされなかったり、歪められたりして不健康な状態になった時に生じるものであり、人間の避けがたい運命ではないと考える。
これは、基本的に「性善説」的な立場を取るものであり、心理学説としては画期的であると言える。
人とは?
★★★★★
冒頭に現代における聖書であるということが書かれている。
世において完全なものなど存在しないであろうが
もっとも完全たる本質に近づいたものが本書であるかもしれない。
心理学の観点からだけではなく、全体を包括した視点(客観性の追及)
により「人」の全体的客観性を統計的に示している。
欲求ピラミッドの段階はあまりにも有名で端的に捉えられがちであるが
偏見を含む解釈は非常に流されやすく、非常に危険である。
やはり、他からの影響を受けない真相により近い確固たる軸がなければならない。
本書は、時と場を越えすべての人に通ずるものであり、確かなものを与えてくれる。
まさに現代における聖書であると言えるだろう。
また、成長志向の強いものにとってこれ以上とない本である。