しかし、マズローの理論はこれで留まってはいなかった。マズローはこの本で「至高体験(peak-experience)」という概念を提唱している。「至高体験」とは「最も幸福で感動的な瞬間」のことであり、これを経験することによって、人は自己実現を瞬間的に達成し、性格的変化をももたらし、究極的には既存の自己を超越し新たな自己をもたらすという。すなわち、段階説の到達点である自己実現を超越するのである。
マズローが人間性心理学(Humanistic Psychology)を創始したと言われるのは、人間の持つ自己実現、更には自己超越に向かう力を信じたところあると思う。最近の「感動」や「癒し」の原点という感じがする。