本書を読んで、もう一度イーストウッドの作品を観直したくなった。
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「わたしは自分がなりたいと思った、そのとおりの人間だ」本文中で、イーストウッドが自らを語った言葉だ。
しばらくの間、イーストウッドという役者は「ローハイド」「夕陽のガンマン」に代表されるウエスタン俳優で、その後の「ダーティーハリー」シリーズでみせたタフさは、まるで強いアメリカを体現してるかようなアメリカ人だと想像していた。プライベートでも役柄同様に好戦的で、ゴリゴリの共和党支持者の気難しい人物。そのような印象が、イーストウッドそのものであった。
それが映画「許されざる者」「ミスティックリバー」を観た辺りから、イーストウッドという映画人に対する観方と考え方に変化が生まれ、さらなる興味も湧いてきた。
この本は、作品前後に合わせて行われたインタビューが中心となっいている。インタビュー嫌いで有名な彼だけに、それだけでも必読の価値はあるのかもしれない。
読後には、かつて勝手に思い込んでいた彼への印象が、いかに浅はかなものであったかを思い知らされた。
イーストウッドの映画作品をこれまでとは違う視点で、もう一度見直したいと考えている。
信念と、本能で生きる、巨匠
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フランス人の評論家により『タイトロープ』から『硫黄島』二部作に至る20年間、
定期的に行われた取材をまとめたインタビュー集。
基本的には新作の発表に合わせた取材だが、
最初の取材(『タイトロープ』)では監督デビュー以来を語り、
『ペイルライダー』では西部劇について語り、『バード』ではジャズについて語り、
『ホワイトハンター ブラックハート』では映画監督について、
ジョン・ヒューストンはもちろん、ホークス、フォード、キャプラ、ヒッチコック
などの巨匠たちについて語るなど、興味がつきない内容だ。
理路整然とした簡潔な語り口の中にも、数々の名言が飛び出す。
アメリカを代表する映画監督としてだけではなく、
信念を貫いた男としての人生観まで読みとることが出来る。
細部まで気を使った装丁が美しく、写真が豊富に折り込まれた構成も楽しい。
なにより、男っぽい文体で翻訳された訳文が、いかにもイーストウッドらしくて、
ファンにはたまらない一冊。