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『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内 (新潮新書)

価格: ¥756
カテゴリ: 新書
ブランド: 新潮社
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胸糞悪い本です ★☆☆☆☆
正直言って、この本は極論が多いと思います。
共感できないから駄作なのか、不可解だから駄作なのか。

それに、三島由紀夫の金閣寺の解釈は独自の解釈が光りすぎです。
 "「きんかくじ」という言葉を聞いて一般の人は「きんかくし」、つまり、金隠しを連想させる。
    金は男性器の睾丸をさし、その金閣寺を燃やすことにより男性器の露出の欲求を表現している…」゛

一般的にこうは思わないと思うのは私だけでしょうか。いえ、私だけではないと思います。
ちょっと適当すぎ ★★☆☆☆
小谷野先生の好きな本を最初から並べて感想を書いただけ
その感想も、たとえば傑作に分類しているものにはとにかく面白い、と書いてあるだけでその理由等はほとんど書かれていない。
冒頭で文学作品の評価基準は人それぞれだみたいなことが書かれているが、だからといってこれではちょっと適当すぎではないだろうか
むしろ書名にもあるこころをはじめ、批判的に書かれた小説の解説の方に力が入っているように思える。


ところで、こころについての解釈が「男であることの困難」に書かれていることと違うのだが、考えを変えたのだろうか。
羊頭狗肉にして玉石混淆 ★★★☆☆
ガイドブックとしてなら役に立たないわけではない。英文学の専門家としての知見も散見される。例えば、『エマ』の阿部知二訳に疑問を呈し、訳者としての龍口直太郎を酷評する。水野亮を稀代のバルザック学者だといい、ディケンズなら『荒涼館』を一番にあげる。さらに近松秋江という今では文学史の片隅にしか出てこない作家の作品を名作だと言い切って私小説こそ日本文学の本流だという持論をのぞかせる。著者に対する諸賢の批判は様々だが、鹿島茂氏の百冊突破を追いかけて売文業に精を出して欲しい。ただ,いくら出版社の要請とはいえ谷崎と武田の対談を枕にした「こころ」論は羊頭狗肉の感を免れない。書名から期待して購読した読者を裏切るものではないのか。また、寸評から成る読書案内とはいえ索引があれば便利だと思う。最後に伝記文学の白眉である中野好夫著『蘆花 徳冨健次郎』に言及しているのは炯眼の持ち主である。
飲み屋での文学談義級 ★★☆☆☆
まず、評価したい点を述べると、さすが碩学の小谷野さん、さまざまな情報を得ることができました。特に感動したのは、永井荷風の『腕くらべ』は岩波文庫で唯一(?)×××××の描写があるということ(202頁)、小森陽一さんと石原千秋さんは「今では私的な交流はまったくないようである。」ということ(217頁)。

次に批判したい点。
上記のごとく、有益な点もありますが、全体的には、飲み会での文学談義程度の内容も多いですね。確かに、一般の人にとって、面白い本は面白い、というトートロジーでしかいえないでしょうが、評論家や研究者であれば、そのレベルではまずいでしょう。

個々の作品批評でも、どうしてそうなるのか理解できないものもあります。

そもそも、1000年も前の上流貴族の恋愛や生活を描いた『源氏物語』が面白く読めるのであれば、小谷野さんが、理解できないと評した近代小説が、なぜ理解できないのか、不可解です。

それから、『舞姫』に関して、「もてない男にとっては不快な自慢話である」(126頁)「女を妊娠させて捨てる色男の話」(165頁)とありますが、どうでしょうか。むしろ、「貧しい大日本帝国が留学に送り出したのに、ストリッパーのヒモに一旦は落ちぶれ、せっかく助けてくれた友人を逆恨みする男の話」ではないでしょうか。
長いあとがきにある答え ★★★★☆
特定の作品に関する評価というより、時代(たとえば徳川時代 191頁近松の項参照)
の評価がはっきりしたものい言いで、実にわかりやすかった。

「自分では革命をおこすこともできない町人階級の、いじけた日陰のような文化、文芸であり・・・」
などという部分(同じく191頁)が筆者にも江戸時代のことを再考すべきだと叱咤してくる。

参考文献がたしかで、新書(悪く言う人の口では「こずかいかせぎ」だそうだ)といえども、
関連書籍を読んでみようという気にさせてくれる。  
なが〜いあとがきに、なぜ文学は読まれるのかという問いに対する答がある。


カラマーゾフの兄弟 を途中でほおりだしてしまった読者、なぜ志賀直哉、芥川龍之介があんなによまれるのか、
(ついでに山本夏彦のことも)理解しがたいとおもっている一般読書家に、一読を勧めたい。
筆者小谷野氏は毒舌で舌鋒鋭い。でも、人によっては、胸のつかえをひそかにおろしてくれる、面白い本。 
オマケで、水村美苗氏がらみの裏話も。
「もてない男」10万部を超えるのはむずかしいかもしれないが。