日本人なら読むべき本
★★★★★
何が日本をあの戦争へと駆り立てたのか。本書は遠山茂樹氏の『昭和史』に対して疑問を呈する形でかかれたものなのだそうな。歴史とは人間の営みの積み重ね。人間を描かずして、歴史の本質は見えてこない。と、著者は主張する。昭和30年の著作だというが、名著は風化することはないのだろう。亀井氏の主張は、現代を生きるわれわれにも切実に、心に響くものを秘めている。適切な言葉で的確に物事を説明できる評論家って、現在どれぐらいいるのだろうか?
明治大正昭和の流れの中で日本がいかにしてあの戦争という破滅に向かって言ったか。亀井氏は日本近代化の悲劇として、冷静に的確に分かりやすく語る。あの戦争で、いや近代化という名を借りた西洋化によって、いったい日本は何を得、何を失ったのか。もうすでに50年以上前の著作ではあるが、亀井氏が未来の日本に対する提言は今読んでみてもその意義を失っていないのが分かる。日本人ならば必読の書だ。こういう名著の更なる復活を望まずに入られない。
現代史への本音
★★★★☆
評論家である亀井氏が、遠山茂樹氏らが執筆した『昭和史』について疑問を呈する。太平洋戦争は、果たして軍部、政治家、実業からと、それに反対して弾圧された人々だけで動いたのか?その中間に、動揺する国民がいたはずではないか?国民、人間が不在ではないか?と。
その他、天皇制や転向、共産党言の問題などについて様々な考察がなされているが、本書が書かれたのが1957年と言うこともあり、現在では切実でない問題も多い。しかし、戦争中果たして国民は本音のところではどう思っていたのか、という疑問や違和感に対して、率直な文章は大変興味深い。そして、ここで問われていることは、現代でも決して古い質問とも思えない、持ち越されたもののように感じるのはなぜだろうか。