読みやすい入門篇
★★★★☆
細野正信(山種美術館・高崎タワー美術館)監修(出版時)。
著名作品でたどる日本絵画史。中高生でもわかるソフトかつ明快な文章。初心者向けを銘打つ入門書は多いがこれはかなり分り易い。「知識ほぼゼロだが興味はある」な大人の読者にもよいだろう。
最初の四分の一程度が「(日本絵画の)20のポイント」となっているが、7世紀あたりの壁画(法隆寺、高松塚)から昭和の東山魁夷あたりまでの超ザックリな日本絵画史。おおまかだがはじめはコレぐらいのほうが頭に入りやすい(切り捨てている部分も大きいが)。
残りが「絵師(画家)72人」で15世紀(土佐光信、雪舟)から昭和の加山又造、平山郁夫などまで。特徴的なのはこのうち近世以前(江戸時代まで)と近現代(明治〜昭和)の画家の比率がほぼ半々であること。これは監修者が細野正信氏なのもあるかもしれないが、日本画が現在進行形で生きているものという捉え方か。ちなみに油絵ジャンルの画家は含まれていない。
基本的に一人一作品見開き2頁(一部例外あり)。画家と作品のセレクトは大メジャーはともかく一部には人によっては異論の出そうなトコロもあるが、これは多かれ少なかれこういう種類の本に共通するところだろう。
大判の本ではないため図版の寸法は難しいところだが、編集がうまく本のサイズのわりに健闘している。全体の図版の総数も結構なもの。
そもそもが実用書やハウツーもの主体の出版社だからか、子供向けっぽいイラスト・カットが随所にあるのは不要感。解説文にところどころ厳密には不正確な部分や裏の取れてない話があったりするがまあこれはこの本に限った話ではない。
なお本の性格上中世以前の絵画・仏画や宗教美術系の絵画・著名でも作者不明の作品などについては弱い。
価格のわりに情報量が多い・さくさく読める内容で、新旧問わず日本画に興味のある人の1冊目としてお薦め。