静かな片田舎で起こった少女エミリー・スタイナーの惨殺事件捜査のため、ケイはFBIに呼び出された。裸で発見されたエミリーは遺体の一部が切り取られており、前作の連続殺人犯テンプル・ゴールトの手口ときわめて似ていた。ゴールトは逮捕を逃れ、いまだにどこかを徘徊している。
いつも頼もしいケイのボディーガード役、ピート・マリーノも今回は役には立ってくれそうにない。マークの死後、急速に親密になったケイとベントンに激しく嫉妬したあげく、被害者エミリーの母親ディネスに入れ込んでしまったらしいのだ。まもなく、捜査中の地元警官の変死体が自宅で見つかる。フリーザーにはエミリーの切り取られた肉片が入っていた。しかし、彼が犯人であるはずはない。ゴールト一流のおふざけなのか。
一方、FBIの巨大な犯罪データが真夜中に盗まれた。セキュリティーはルーシーの指紋でやぶられていた。だれかにはめられたと主張するルーシーだが、なにやら隠しごとがあるらしく様子がおかしい。ルーシーの嫌疑をはらすために奔走するケイは、犯人へとじりじり迫っていく。
本書は、一話完結のスタイルをとりながら、作品を超えた伏線がはられる長大な物語へと展開している。本書を閉じた瞬間にすぐにも次作を読みたくなるだろう。(木村朗子)
ただ、以下の点により、評価を下げた。
1.謎が残った部分があり、その意味ですっきり解決とはいっていない。
2.この人の手法がもう一つ気に食わない。ようするに、物語の筋(事件の謎や、展開の意外性)そのもので面白みを表現しているわけではなく、上にあげた、Kayの不安により、物語を盛り上げている。
最大の謎は、この本のタイトル。何故このタイトルを付けたのかが、分からない。"Body Farm"という場所が、主要な舞台ではないからだ。
まあ、それにしても、この人の小説は、計3冊目になるけれども、それなりに読ませてくれる。