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夏王朝 中国文明の原像 (講談社学術文庫)

価格: ¥1,103
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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夏王朝研究の現在 ★★★★☆
 日本ではまだまだ「幻」の夏王朝。
 ところが地元中国では普通に教科書に載って、当然存在したものとして扱われている。
 この「温度差」を埋めるべく、執筆されたのが本書だそうです。

 内容的には、中国の政治的問題から始まり、史書を基にした研究の今日までの歩み、考古学の執筆時までの成果、をまとめたもの。
 なかなか内容は濃いです。考古学部分は、当方が知識不足のため読むのに難渋いたしましたが、また勉強をして何度でもチャレンジしたいと思います。

 本書の中から浮かび上がってくる中国第一王朝の姿も魅力的なのですが、著者が本来書かんとした「中国の夏王朝研究の今日」というテーマも興味深い。
 何だか日本の古代史研究の様子とも似ていますね。特に戦前のそれと。

 文献の内容を研究することは、言葉さえ分かれば外国(日本)にいてもある程度出来ますが、考古学的な研究はやはり現地でなければ出来ない。そのためには、相手を理解する(評価する、ではなく)ことが必要となってくるでしょう。その上で、外国人だから出来る研究姿勢もあるかもしれない。

 第一王朝の研究はやはりまだまだ途上段階のようですので、続報を待ちたいと思います。
伝説の夏王朝に迫る ★★★★★
 これまでその実在が否定的であった「夏王朝」に迫る一冊。 
 前半では伝統的な文献に見える夏王朝のあり方を整理、確認していく。後半では近年の考古学の観点からの成果を見ていく。地図や図版が豊富に示され、そのエキゾチックな古代文明は我々の興味と関心をさそってやまない。
 その考古学上の成果と文献上の姿とを緻密に一つ一つ突き合わせて、夏王朝の全貌に迫っていく。もちろん今後の課題も多く、修正されるべき点もあるかもしれないが、現在進行形の営みはスリリングだ。
 文庫収録にあって補論も収められている。
二里頭文明は本当に夏王朝なのか? ★★★☆☆
 学術文庫からの久方振りの古代中国物です。それで喜んで衝動的に購入しましたが、読み始めて直ぐにそこはかとないデジャビュ感に見舞われました。「ひょっとして?」 そうでした。以前ハードカバーで購入した講談社の「夏王朝−王権誕生の考古学」を学術文庫が収録・出版したものでした。「ショック!」 ちょっとトホホですが、こんな質の高い内容の、しかも2003年末に出版されたばかりの本が文庫で読めるようになるというのは、ホントに素晴らしいことです。講談社の太っ腹具合に感心すると同時に、我が国読書界の水準も捨てたものではないのかなと、妙に安心してしまいました。
 それはさておき、本書ではハードカバー出版後の学術動向に関する「補論」が附されています。それによると、夏王朝滅亡後と思しき二里頭第4期以降も、二里頭遺跡では朝会儀礼や各種器物の製作が継続していたことが発見されたのだとか。この点について著者は、夏の遺民による営為か、夏王都を接収した殷の所作と主張していますが、素人目に考えれば、むしろ「二里頭文化=夏王朝」という図式そのものに疑問符を付けざるを得ないような状況ととらえた方が素直な気がします。新発見による考古学の書き直し、なんだかワクワクして目が離せませんね。