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消えた「最後の授業」―言葉・国家・教育 (国語教育ライブラリー)

価格: ¥2,415
カテゴリ: 単行本
ブランド: 大修館書店
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惜しむらくは… ★★★☆☆
 国語教科書に掲載され、私自身も含め多くの日本の子どもたちに印象深い物語として記憶されていた「最後の授業」。この小説がどういう意図を持って戦前・戦後の子どもたちに教えられていったのかを、明治以来の膨大な資料に当たることで辿っていった労作です。国語教育のありかたにも迫るノンフィクションといえます。

 しかし画竜点睛を欠くといわざるを得ない点があります。著者は結局のところ「最後の授業」がなぜ日本の国語教科書から消えたのかという理由については「推測」しかしていないのです。

「こうした指摘を受けた結果であろう、(中略)国語教科書から、いっせいに姿を消したのであった。(216頁)」

「教科書教材としての生命にとどめをさしたのは、おそらく田中克彦氏の一連の発言で!あり、その著書『ことばと国家』であったように思われる。(291頁)」

 上記のように「結果であろう」「おそらく」「思われる」という当て推量を示す言辞の裏に、著者(横浜国大助教授)が資料の渉猟を超えた取材へと足を踏み出していかなかったことが伺えます。

 「最後の授業」が完全に日本の教科書から姿を消したのが1986年、そして著者がこの本を物したのが1992年。労を惜しまずに教科書会社や文部省、教育委員会等々に取材をしてみれば、わずか6年前に掲載停止の決定を下した人々の証言が取れたはずです。ちなみに私もこの件には興味を持って、大手の教科書出版会社数社に電話をして訊いてみたことがあります。うち2社が田中克彦著「ことばと国家」(岩波新書/ISBN: 4004201756)の書名をあげて、掲載を中止する理由となったと言っていました。
 膨大な資料に当たることを厭わない著者がなぜ一本の電話を惜しんだのか。その点が不思議であり、残念です。

「最後の授業」を考える ★★★★★
慣れ親しんできた母国語を、明日から使用してはいけないという命令をつきつけられた教師が、生徒とどう向き合ったか。それを真剣に考えさせられる「最後の授業」という作品が、教科書から消えようとしています。私は教育学を学んでいますが、なぜこの作品が教科書に掲載されなくなったのかを考えることに大きな意味を感じます。