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ハング・ルース (河出文庫―文芸コレクション)

価格: ¥489
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
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テキトーでいいかぁ ★★★★☆
    フェイスが親指と小指だけピンとはねあげた。
    「親指と小指くらいは遊ばせて、ゆったりつかまってればいいじゃん」

 作中にはこう述べられているから、ハングルース(Hang Loose)は「テキトーで行こう」ということでいいのかなあ。
 けれどそんなにユルユルではないが、深刻でもない小説である。
 三部立ての作りになっているが、あいかわらず不良少年たちの深夜徘徊の話ではある。フェイスはどうやらバイニンらしいし。「夜回り先生」の水谷先生なら「早く家にお帰り」と声をかけるところである。
 それにしても、ここでもたくさんのエキストラが登場している。みんな、なにしに舞台に登場するのかというと、ユイが説明するには、みんなは「体温中毒症」らしいのだ。
 体温中毒症とは自分なりに解釈するに、ひとりになる不安。それが嫌で友だちを求めて「パクパク」や「クラブ・ヌー」に毎晩集まってくる。
 親や家族から離れたものの、やはり温もりがないと心細いのだ。そうして夜になるとお友だちを求めて徘徊したくなる、そんなお年頃なのだろう。二十歳の前後というものは。
 1部2部と違って、第3部は保険証を借りに父と会うシーンがあるが、これがこの小説(集)では一番安心して読めた。父がリアルだった。若い娘としては、父の体温が一番欲しいところなのだろう。
お気楽に出来ない人に… ★★★★★
ユニとフェイスの二人の小さな恋のお話です。
ドロップアウトな二人は寄り添わなきゃいけない生活を続けているんですが、基本はhanglooseで全て乗り越えようとしていきます。
世の中の歪んだ部分も流して過ごそうとしていくスタイルにそれが出来ないもどがゆさがリアルに感じました。
最後にhanglooseをかざして去っていくフェイスに鷺沢さんの秘めてる孤独とそれを見せない強さを感じました。
僕は大好きな作品です。
絶対お薦めです。
いい本です ★★★★☆
手にとって「あっ」と思った。
4月に作者の鷺沢萌さんが亡くなられたという
スキャンダルなニュースが記憶に新しかったこともあって。
温かみのあるしっかりとした紙と鮮やかな夕日がバックの表紙に惹かれ
思わず文字を追い始めた。
ちなみに初めて読んだ鷺沢作品でした。

居場所を失った主人公のユニが、職場であるバーの常連である

フェイスという男性に拾われ(るかたちになり)
居を共にする。
どうして二人が一緒に住まなければいけないのか、という背景に
ユニとフェイスが、スタイルこそ違うものの
人生のどこか歪んだものを戻そうともがいているという事実が
冷静に綴られていて興味深い。

最後の章はフェイスの目から見た構成になっていて

ユニ目線との書き分けが実に見事だと感じた。

どうしようもないユニとフェイスではあるが
文体にも、作者からの愛着がにじみ出ている。
あとがきを見ればよく分かります。

追悼 ★★★★☆
『愛してる』や短編「果実の舟を川に流して」から繋がる作品。
「クラブ・ヌー」で出遭ったドラック売人のフェイスと家出娘のユニ、
無頼派的生活を送っている「荒れた」二人が、
そのピュアさ故に惹かれ合い、同棲するという筋立て。
ありきたりではあるが、『愛してる』時とは違って
一冊の分量で丁寧に二人の背景と内面を描写しているが故に

質の高い作品となっている。

一般社会のしがらみから逃れるように、
そして目をそらし続けられるように、
肉体を極限まで酷使する二人。
その熱病に犯されたような日常の中で
それでも目に入ってきてしまう細々とした事物の描写が
一瞬の閃光のように記憶に残る。