酒見賢一による同名短編小説の劇画化である。とはいえ、小説どおりに進むのは最初だけで、主人公・革離の梁城を守る戦いは文庫3巻まで。しかも原作とはまったく別の形で終わってしまう。あとは「原作」と関係なく、革離たち(仲間ができる)と墨家、および秦などとの戦いが、非情な筆致で描かれる。醜悪なリアルさをもつ絵柄には最初違和感をもったが、戦争とはそういうものであり、次第に「これしかない」と思えるようになる。当然、残酷な描写が多いが、これに嫌悪感を持ち続けながら読んだ方が、かえって本作品の真意は伝わりやすいだろう。
作品自体の質は非常に高い。しかし、極限まで凝縮された原作に感動して本書を手に取った私としては、原作を離れて以後の、長い後半が物足りなかった。たしかに物語としては面白いのだけれど、原作の密度に及ばない。結末のあり方にも大きい疑問が残る。原作より先に本作品に接し、感動した人には、是非原作を読んでほしい。