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永遠のとなり (文春文庫)

価格: ¥520
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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若い時分は、自分の死より他人の死がリアルである ★★★★☆
白石の作品群は、ときに余りに哲学的、宗教(論)的、で生と死の問題に真正面に取り組むため、しんどい場合がある。もちろん作品としてはみないいものだけどね。
そういう意味からは、本作品は、自分自身の死と言うより、自分の愛すべきものの死から、自分の人生と愛すべき周囲の者たちの人生に思いを巡らすと言う感じで、私には、よりリアルだった。
そう、特に若いときに最初に死を思うのは、自分のしのことではなく、周囲の死のこと。特に、両親、祖父母、の死を考えることで初めて人生の中の「死」の存在を意識すると思う。

一方、本作品のもう一つのベクトルは、主人公自身の精神の問題がある。ウツと言うのは、こうして語られるとなるほどなかなか大変なものであり、治療に向けては周囲の人間の理解と支援が大事だなぁ、と改めて思った。生半可ではないな。
ただ、このウツの問題は主人公の問題であるにも関わらず、本作品のメインは、やはり「他者の死」であると思う。

私は今、年を食って若干鈍感になってしまった。
しかし、折りに触れ、私を「死」の存在が包み、眠ることができなくなるときがある。この恐怖に初めて直面したのは、12の時、祖父の死を目の当たりにしたときであったし、その恐怖の対象は自らの死ではなく、両親も死ぬのであることを認識したときだった。
白石の作品は、こうした自分自身の精神が、ともすれば折れそうになるときに、ふっと支えてくれる。
暖かな、しっかりとした共感が私を支えてくれる。
終始穏やかなムード。組立ての巧さが光るコンパクトなB級作品 ★★★★☆
「生きる」というテーマに対して様々な角度から切り込んで来る白石一文氏。
小説という手法を使い、このテーマの“布教活動”的な作品を次々と世に送り込んできます。
この作品は、幼馴染の2人に「癌」と「うつ」というこの上ない精神的痛手を被る過去を背負わせ、そこからこの2人が「生」に対して挑んで行く様を通して、「生きる意味」を問いかけているのだと思います。
ここに描かれた2人は決して強い人間ではなく、ごくごく一般的な同級生。
そんな2人が周囲の人間との関わりの中で我々と同じように普通に悩み、普通に考えながら「生きる道」を選択して行きます。大上段に構え、強い意志のもとで仰々しく「生きて行くのだ」とやっているわけではないところに組み立ての巧さを感じます。彼らの会話に終始出てくる穏やかな語り口調の博多弁が、全体のムードを落ち着いた雰囲気にさせており、この手法も正解だったと思います。

非常にコンパクトな作品で、逆にそれが間延びしない良い意味での緊張感を維持しています。
病魔という姿の見えない相手に怒りを覚えながらも日々の生活を送る2人。この2人が慰めあい助け合いながらも半歩ずつ前進して行く健気な姿からは大きなパワーやうねりは感じませんが、しかし読み進むにつれて確かにジワジワとした力を与えられるような気がしてきます。
大作ではありませんが上等なB級作品だと感じました。
「死」について考えさせられる ★★★★☆
 感情表現の物足りなさで、序盤は物語にのめり込むことができなかったのですが、
内容を追っていくうちに、ああやっぱり考えさせられる本だな、と思いました。
平坦な構成なのですが、その中に、死と生について、哲学的なことが描かれております。
号泣、とまではいかなくとも、余韻を味わうことはできるので、
感動の再生物語、と帯の言葉を受け取っても大丈夫でしょう。

 上記のとおり、考えさせられる本だ、と思ったものですが、
その考えさせられる本の中で最も印象に残ったのは、人類が永遠の命を手にしたときについて話し合っている場面でした。
人類がずっと抱いていた欲求、つまり我々一人ひとりが願わないこともなかったことであるはずなのに、いざこうして突きつけられてしまうと、
永遠を手にしたとしても、果たして幸せになり切れるのか、と考えてしまいます。
幸せとは長く生きることではなくて、どう生きることなのか、である。
そんなことを考えさせられました。

 
「平凡な生などない」 ★★★★☆
浮気で家族に発たれ、同僚の死を境に病を患い、故郷で療養に専念する主人公。
癌と戦いながら、離婚と再婚を繰り返す親友。
珍しい程に等身大で描かれるこの二人が懸命に生きる。
つらく切なく平凡で報われない人生に怒り、生の意味を問う。
そして、「平凡な生などない」という気づきの先に希望を見出す。

経済的にも健康面にも問題なく、つつがなく暮らしている人々こそが読んでより多くを得られる物語ではないだろうかと思う。
永遠の、あっちゃんとせいちゃん ★★★★☆
お互いのことを「あっちゃん」、「せいちゃん」と呼び合う二人。
この物語の主人公たちは、一体女性なのか、男性なのか、大人なのか、子どもなのか…という疑問が、
最初の数行を読んで湧く。

彼らは50年以上も生きてきた幼馴染の男性。
一人は肺がんで治癒と再発を繰り返す。
もう一人は、うつ病からの回復途中。
九州出身の二人、若い時は東京でわりと華やかな仕事に就いていたけれど、
今は病気を理由に、九州に戻っている。

そんな二人の静かな日常を描きながら、著者は私たちにこう言っているようです、
平凡な人生などない、と。
平凡に見えて、誰もがいろんなことを抱えて生きている。
静かに、孤独と闘いながら。

二人のおじさんの会話が、非常に愛らしいです。