楊令が成長
★★★★★
いよいよ北方謙三の水滸伝も終盤。ここのところ忙しくて本も読めず、すでに18巻も文庫化されたのを知り、慌てて読んだ。
遂に魯達も死んだ。花和尚と呼ばれ、私が一番好きな人物だったのだが、残念。代わりにあの青面獣といわれた楊志の息子、楊令が成長し、気になる男になった。
『水滸伝』(1〜19/替天行道:北方水滸伝読本)
★★★★★
書き始めると止まらなくなりそうなので…
原典の『水滸伝』を凌駕した最高峰の中国史小説でした。
そして、読んだ全ての人それぞれに違った想いを抱かせる、枠に嵌らない作品だと思います。
一読の価値は間違い無しだと思います。
双頭山壊滅しかし高廉の軍を殲滅
★★★★★
前回の官軍20万の総攻撃時に首の皮一枚で生き残った双頭山が陥落。
梁山泊軍の破滅が始まるかと思いきや、公孫勝ひきいる致死軍が青蓮寺の闇の軍である高廉の軍をついにせん滅。
結末はわかっていても梁山泊軍をとにかく応援してしまいます。
敵がインフレ化?
★★★★☆
前の巻から童貫がその力を発揮して来ていますが、
さすがにこれは強過ぎでは。
この強さの軍が五万も維持できるのなら宋国は腐敗していません。
蔡京までもが役人の腐敗に全力で対応しようとするなら、
梁山泊の存在意義はなくなりますね。
国内を疲弊させて遼や金に攻め込ませるきっかけを作った
亡国の徒ということになってしまいます。
梁山泊軍を強く描き過ぎ、そのぶん敵も強くしなければならなくなった、
少年漫画で見られる”敵のインフレ”傾向が見られますね。
馬万里が関勝と互角の一騎討ちを見せるシーンでは
”水滸伝・天命の誓い”や”神聖・馬万里同盟”のファンたちは
呆然とし、感涙にむせんだことでしょう。
”驚愕のあのシーン”シリーズは今回は燕青。
林冲・武松・魯智深・扈三娘などで
すでに”驚愕”とも言いがたい状況ではありますが…。
高井康典行氏の解説は冷静かつ数値を交えて具体的で、
さすがと思わせるものがあります。
宋代の研究者が増えるといいですね。
敵将、童貫の圧倒的な力
★★★★☆
北方水滸伝、文庫版最新刊です。17巻です。
前巻から始まった、禁軍総帥童貫との戦いがいよいよ激化する本巻では、今迄以上に激しい戦闘で梁山泊の英雄達の多くが命を落とします。代表的なところでも、関勝を筆頭に大量に死んでいきます。そして、それだけの犠牲を出しても、幾度もの激戦を乗り越えて来た双頭山が瞬く間に落ち、二竜山も篭城状態に追い込まれてしまいます。時を稼ぐべく、高球をうまく操って帝との休戦も時間切れ、再び始まった戦でも防戦一方です。
それだけ、今回から本格的な梁山泊攻めを開始した童貫の軍が精強を極めていたということなんですが、これが本当に強い。梁山泊の英雄たちの命を盾にして、それでもただ侵攻を遅らせるくらいしか出来ないくらいに桁違いに強いのです。ので、次巻からいよいよ童貫が全軍を挙げて梁山泊を攻めてくる戦いがどのように展開するか、今から手に汗握る感じです。史進でも、林沖でも、呼延灼でも止められない童貫とどう戦うのか、非常に楽しみです。宋の軍の最後にして最強の敵である彼との勝負がどうなるかで全ての歴史が決まるのですから、どちらの軍も総力戦です。
さて。それはそれとして、この巻では物語開幕以来ずっと物語を人を引き入れていくという形でひっぱってきた魯智深改め魯達が最後の時を迎えます。王進のいる子午山で楊令と最後のときを迎えるシーンは、この「水滸伝」のある意味一番印象的なシーンになりそうです。