陰あって光きわだつ
★★★★★
「陰あって光きわだつ」この言葉は本書の中に書かれていた一言である。
「がんの体験は多くのきっかけを与えてくれた。あの忌まわしいヤツめは、ひどい試練をもたらすと同時に、あらゆる授業をはるかに上回る学びの機会をくれたのだ。自分や他人の一生について、こんなに真剣に考えたことは今までなかったし、自分の弱さといや応なく向き合わされることもなかった。鈍感な「強者」になっていた自分に気がついたのも、世の中にあふれる幾多の苦しみや悲しみに思いをはせるようになったのも、すべてがんがきっかけだった」
この本は26歳の新聞記者が自分や家族をみつめながら、がんと闘う様を、克明に記した本だ。
文章もさすが新聞記者、とても読みやすく、分かり易い。是非お奨めしたい一冊である。
素直に感動
★★★★★
がんの闘病記という重い内容なのに、すんなり読める。しかも素直に感動できる。
文章の巧みさや表現の豊かさは、新聞記者ならでは。
本当の苦しみや辛さは、患者や家族でなければ分からないのだろうが、
本書では、がんの恐ろしさはもちろん、抗がん剤の副作用、再発の不安等々をリアルに
イメージできる。そして、まるでドラマのような奥さんとの結婚とその後の生活。
共に病気と闘ってきた姿に心から感動した。
再発を乗り越え、文庫化にあたって最近書いた「あとがき」も筆者の記者魂、
人生感が篭っている。一言一言が重い。
今後、紙面で筆者と奥様の記事を読むのが楽しみだ。
ますます元気で活躍して欲しいと願わずにいられない。
絆の強さという通奏低音が鳴り響く
★★★★★
一気に読み終えた。そして、読後はしばしボゥーとして動けなかった。全体を通して抑制の効いた冷静な観察眼が生身のココロを淡々と映し出す。「生と死」に真正面から向き合わされた。そして、夫婦というか、人と人の絆の強さを思い知らされた。二人の積み重ねた時間の重さにただただショックを受けた。「人はなぜ生きるのでしょうか?」「きっと死ぬまで生きるために生きているのではないかと思うのです」結婚式での奥様の言葉が、終わらない反響音のように静かに鳴り響いている。
「病人は病人らしく書け」の意味。。。
★★★★☆
僕の生まれた田舎に「地ひびき」という同人誌がある。
句や川柳、文章が好きな母が会員ということもあり子供のころからなんとなくこの同人誌のバックナンバーを、意味もわからずパラパラめくったりしていた。
その中にあった、病床から寄せられる詩歌に選者からの助言というにはあまりに厳しい、激励というには痛々しい言葉が忘れられない。
「病人は病人らしく書け」
原文とは違うが、こういう趣旨の一行がそこに置かれてある。
「ずいぶんとキツいこと書くな・・・」
当時、強くそう感じたことを、この本を読んで思い出した。
そして「病人は病人らしく書け」という選者の言葉は、とても本質的に重要な、的を射た忠告だったんだということを「がんと向き合って」の著者から教えられた。
病の当事者がありのままを飾らず語る。
「書きにくいな」「恥ずかしいよ」「書いてもしようがないか」「もう少しカッコよく書こう」
自らのことを書くときに襲われる弱気や誘惑を排除して、心の声がそのまま紙面に踊る。
病の当事者でない人に病の当事者のことが伝わるのは、そのためだろう。
そうか「病人は病人らしく、そして、上野創は上野創らしく」書いたんだ。
さてさて感動の読了後はなぜかさわやかな気持ちになる。
それは著者が今なお生きているという事実以上に、本人はもとより、奥さんや家族、まわりの人間たちの生き方、生き様が明るくさわやかだからに違いないと思っている。
思わず立ち読みで読破してしまいました。
★★★★★
新聞で断片的に読んでいたつもりでいたのですが、自分が告知を受けてから、抗ガン剤にトライし、「抗ガン剤はきいていません」と主治医に告げられてから、町の本屋さんで出会いました。
その通り、その通り、その通り!!、隅っこのコーナーだったので、涙があとからあとから出てきました。私はとても弱虫で、続けざまにくる現実に、向かい合う力も残っていなかったのですが、上野さんの率直な想いがとても伝わってきて、あ、やっぱりこう感じるんだよね・他の体験記ではなかなか見られなかったことが書いてあり、とても親近感を覚えました。私もここから始めるしかないんだ、まだ始められるんだと思うことができました。生きてることに感謝する気持ちが沸いてきました。上野さんありがとう。怖いのはガンではなく(もちろん怖いけど)、弱い自分です。