「赤頭巾ちゃん気をつけて」からの薫クンシリーズ4冊目、完結編。 やたらと「若いエネルギー」(!?)が溢れていた当時(1969年)の新宿に、主人公の薫クンは出かけていく。そこで出会う人尽くに、何故か考えてること感じてることを懸命に話しかけられ、薫クンはまるで自分の問題みたいにすっかり考え込む。彼が考え込むのはいつものことだけど・・・。 自殺を図った同級生、その仲間が作った「葦船」というスナック、月に飛んでいくアポロ11号、解釈するだけで自己完結してしまうコマネズミ達、etc.がまるで時代の「風見鳥」になって示すものは。 薫クンの親友・小林曰く、「若者の夢が駄目ということは、要するに言葉の本質的な意味において、青春がなくなるってことじゃないか?」
実際なかなかに深刻なはずの問題が、相変わらずの(むしろ磨きのかかった?)軽妙な文章で語られてます。ほんとに読みやすくて、笑えて、でも切実。「若者が世界を動かすという夢」が滅びた感覚は、今の方がもっと身近にあるだろうし、すごくしっくりくると思います。 薫クンシリーズは、何度読み返してもいい本です。今ではあまり(特にシリーズ4冊目のこれなんて)売れてないようですけど、心からお勧め。 同じく庄子薫の「バクの飼い主をめざして」とかと一緒に読むと分かりやすいかも。