みごとな文学的達成
★★★★★
これほど確信犯的に人生と自己を戯画化した若手作家はかつていなかった(そしておそらくこれからも)。俳諧的なみごとな文体と華麗な筋運び、軽妙洒脱な会話体とモノローグ。書くことと生きることとをどのように結び合わせるのか、著者自身の煩悶が主人公に高踏的に反映されていて、しかも構造的に良く練られた夏目漱石クラスの画期的4部作である。本4部作の良さがわからない読者は、残念ながらノーベル賞クラスの一流文学の素晴らしさの恩恵から一生無縁の人間である。三文娯楽小説を抱いて火葬場まで行けばよい。