『Think Tank』はブラーにとって思い入れのある1枚だろう。レコーディング中にオリジナルメンバーのグレアム・コクソンが脱退してしまったのだから。ではこのブラー復帰作がいまひとつかというと、前作同様アイデアのごった煮ながら統一感のある1枚に仕上がっている。
デーモン・アルバーンのソロ・プロジェクト、ゴリラズのド派手ポップと実にエモーショナルな前作『13』に続いての新作は、ソウルフルで微妙な味わいの1枚。ブラーらしいロックナンバーも2曲用意されている。「Crazy Beat」はノリノリの定番「Song 2」を思わせるし、「We've Got A File On You」は短いながら出来が良く、扇動的なパンクバンド、クラスがモロッコの蛇使いと喧嘩しているかのよう。
とはいえ変わった点もやはりある。デーモン・アルバーンのメロディセンスは健在だが、コクソンの破壊的なギターがないせいか『Think Tank』は別のバンドのような印象を与える。モロッコでのレコーディングとデーモンのマリ音楽への傾倒がブラーに変化をもたらした。「Caravan」ではらくだのペースのようなスローリズム、「Gene by Gene」では砂漠を連想させるかのようなクロスリズムと意表を突くサウンドが使われている。今のブラーは正統派ロックではなく自分たち独自の音楽を追及しているようだ。進化しすぎてついていけないと思うファンもいるだろうが、ありのままのブラー、つまり変化し続ける彼らを受け入れることのできるファンには、この『Think Tank』は聴きごたえ十分の1枚だ。(Caroline Butler, Amazon.co.uk)
無題
★★★★★
「No Distance Left to Run」のおかげでBlurのアルバムを聞き返してます。結局のところ、Blurのキャリアで押さえなければならないのは「Modern Life is Rubbish」「Parklife」「blur」そして、この「Think Tank」でしょう。もちろん、個々の好みはあるでしょうし、この他のアルバムにも聞くべき名曲は多々あります。しかし、ある程度年齢を重ねた今は本作こそがBest of Blurです。
どの曲も悲しいのに暖かい、メロディアスなのに奇妙。という不思議な曲ばかり。
デーモンが手に入れた新しい音楽を嫌味なく出してきてるのも良い。グレアムの不在から地球規模の問題、そして、自身のキャリアの転換期と様々な不安要素がこのアルバムの肝になっていると思います。
だからこそ、これはデーモンのソロ・アルバム的だし、それで良かったと思います。このアルバムの唯一の欠点が最もバンド的な「Crazy Beat」ですから。あくまでBlurの作品として仕上げたかったのはわかりますが、「Crazy Beat」を抜いた流れが完璧なのは異様です。
それでも、このアルバムを愛してしまうのは浮きまくってるこの曲が、かつての友情の残り香になっているからです。
ポップの道化師、デーモン
★★★★★
グレアムが抜けて何とも表現しがたい鋭角なギターは無くなってしまいました。轟音に身を任せて痺れるぅ!って感覚はこのアルバムからは得られないでしょう。
しかしその分引立っているのが、デーモンの、ブラーのポップセンス。
この頃のブラーはグレアムが抜けて、その後5年も活動休止したことからも想像できるように、あんまりバンドの内情はいいものではなかったんでしょう。音がなんか疲れ切っちゃった感じ。
しかしデーモンはポップの道化師とでも云いましょうか、そのやりきれなさもポップにしてしまっているんです。例えばBattery in your legなんてグレアムへの恨み節みたいな歌詞なんですが(笑)、なんともその思いが伝わるバラッドになってます。
だからなのか分かりませんが、疲れ切った夜の心象風景にこのアルバムはマッチします。
ビートルズのI'm so tired辺りが好きな人に是非聴いてほしいアルバムです。
2003
★★★★★
長年のファンにはギタリストのグレアムが解雇された時点で「もう認めない」と思った人もいただろう。それくらいブラーとは4人それぞれの個性溢れるプレイと存在感がぶつかり合って生まれる化学作用によるところが大きなバンドだった。それでみんな揃って前進し続けて行けたら問題ないのだが、4人の人間が10数年の間仲良く足並み揃えてクリエイティブであり続けるなんて奇跡は滅多に起こるものじゃない。脱退の真相は明らかではないものの、仲良しのふりをし続けるよりクリエイティブであり続けることを優先させた苦渋の選択だったと思う。それを選んだのはデーモンであり、できあがった作品はブラーというよりはデーモンの、「前へ進まなくてはならない」という気持ちを強く伺わせるものになった。だから、ところにより彼のソロ・プロジェクトであるゴリラズぽかったり『マリ・ミュージック』ぽかったりもするのだが、いくらか残されたグレアムのプレイと、やっぱりファットボーイ・スリムには土俵を渡さない彼ららしい音に、サウンドは変われど揺るぎないブラーらしさを見るのである。
むろん、かつてのバンドのマジックが今もあると言うつもりはない。ただ、それに代わって今の彼らには成熟と洗練が加わった。数曲で聴かれるデーモンのやさしく深く胸を打つ歌は以前の彼らには望むべくもなかったものだ。美しく優雅に年を重ねるということはむずかしく、ときには大きな決断も必要とする。もがき、いまだに試行錯誤しながらも、素敵な大人のバンドに彼らはなったと思う。
Gorillaz風Blurと言おうか
★★★★☆
デーモン・アルバーンの音楽的な懐は底が知れない。
あからさまに民族音楽やアコースティック・サイケ、ピアノを利用しても
出て来る音はやはりデーモン・アルバーンが書いただろうというような作りで
本当に聴く者を安心させる。
グレアム・コクソンが抜けた事でパンキッシュな勢いはなりを潜め、
ただただ音の結晶とデーモンの優しい大人の雰囲気が漂うこのアルバムを作り出した
ブラーにエールを送りたいのと今後のデーモンの活動からも目が離せないのだ
4人が一番いいけどね
★★★★★
私はcrazy beatでBlurを知りファンになってこのアルバムを聴く前にモダンライフ〜やパークライフ、グレートエスケープを購入して聞いて更にファンになりました。
グレアム脱退のせいもあってかこのアルバムは本人も認めてるようにデーモン色の強い作品になっていますが、それでも素晴らしい作品だと思います。
最後の曲Battery in your legなんかは名曲すぎて何度聴いても泣けます。
やっぱりそれもグレアムが参加した曲だから目立って良くなってるのかなあとも思ってしまいますが;^^)ああでもライヴバージョンも良かったので、やっぱそこもBlur本来の力量ということで。
you can be with me,if you want to beという言い回しがいかにもデーモンらしい