百年前のお隣さんは・・・
★★★★☆
昭和初期に生きたライター・篠田鉱造が、当時辛うじて存命していた明治時代の担い手達に取材を行い、徹底して実話主義を貫いて生まれたのが本書。ここには歴史の表舞台に出てくる事のない、様々な明治時代の風景が活き活きと語られている。
まずは、最後の公儀首斬役人の述懐。なにしろ、万物の霊長の首を斬るわけですから・・・と秘伝の呼吸を説明し、高橋お伝を斬った話と、本人の語り口調そのままに物語は続く。
その他に、当時初めて出来た区役所に勤務した公務員の回顧談や、浅草周辺の花屋敷、水茶屋での粋人の様、薬袋「金袋円」の中にまれに入れられている金の観音像ほしさに皆が買い求めた話、年老いた吉原芸者が語る、当時は皆自毛結い裸足でお座敷を勤めたという粋な思い出話、銭の雨を降ァすお大尽の話、日清戦争時に名物の石鹸を作って大儲けした男の述懐などが多数収録されている。
各章4、5ページ完結なので、通勤時間や寝る前の5、10分を潰したい時等にちょうど良い。
もちろん、史実としての価値もあるのでお好きな人にはこたえられないと思う。