『朗読者』の作者による、ドイツらしさを堪能できるミステリー
★★★★☆
『朗読者』で有名になったベルンハルト・シュリンクによるミステリー。
ナチス政権下で検事を務め、今は私立探偵となっている60代後半の
ゲーアハルト・ゼルプが主人公。
物語は、ゼルプが良家の子女である女子大生の失踪の調査を
引き受けるところから始まるが、やがてこの失踪事件に
思いもよらぬ政治的なテロや陰謀がからんでくる、という展開。
ナチス政権下で検事という経歴を持つ高齢の探偵というだけでも
面白いが、ゼルプを取り巻く恋人・友人がいきいきと描かれ、
ドイツ料理やワイン、美しい田園風景の描写も楽しめます。
戦後奇跡の復興を遂げたドイツの陰の部分(70年代の過激派の活動など)も
物語に織り込まれ、英米のミステリーしか読んでこなかった私には
極めて新鮮でした。ほかのゼルプ・シリーズも読んでみたいです。