優れた時代感覚
★★★★★
三木は『読書と人生』の中で、のちに師となる西田幾多郎の『善の研究』に触発されて哲学者となったことを述べている。本書の序文も哲学者として大成した三木から読者である哲学青年たちに贈ったメッセージかもしれない。事実『哲学ノート』は戦後の哲学青年の必読書であったという。
さて本書は主著である『構想力の論理』(以前は岩波書店から、現在は燈影舎より『創造する構想力』と題して刊行されている)へと続く小論集である。刊行された1941年という時代を反映してか指導者論やジャーナリズムなどあつかったものが多い。
『人生論ノート』など三木の著作を読むと卓越した現実感覚・時代感覚を感じる。三木が治安維持法の倒れたの皮肉ではあるが、それは逆説的に優れた現実感覚・時代感覚を有していたことを示すものだろう。
『哲学ノート』から新たな哲学者が生まれることを望んで、このレビューをしめようと思う。