人生のいいところで終わらせたのは正解、読後感が爽快になる。
★★★★★
宇喜多家と羽柴秀吉の交渉人としての活動から肥後半国の領主となった人生絶頂期までの人生を追った後編、人によっては、加藤清正と先陣を争い、清正以上の軍功を残した朝鮮出兵や、宇喜多秀家や石田光成とともに武将らしく戦った関ヶ原の戦いについても触れてほしかったと思う人も多いと思う。関ヶ原や朝鮮出兵については史料が多く残っているので海音寺潮五郎氏や司馬遼太郎氏などの作品で取り上げられている。史料がほとんど残されていない時期については、他の武将が中心となって記された史料をもとに、様々な視点から推察するしかない。このような難易度の高い史料分析をもとに小説を書けるのは、経験が豊富で海洋小説を得意とする白石氏しかできないと思う。本作のクライマックスは高松城と紀州の根来雑賀衆の城攻めで、水中に浮かんだ城に対する船からの攻撃で戦功を挙げたことを本書を読んで初めて知った。読後感も爽やかで、小西行長に対する狡猾な悪印象は見られない。この小説は行長にとっては最高の供養になると思う。本書ではマガジンに連載されている仙石権兵衛秀久がどうしようもない悪役として登場している。