美しさと悲しさを感じる印象的な本
★★★★★
ラフカディオ・ハーンさんの本は色々読みましたが、
個人的には、初期の頃の作品で多分最も有名な『知られざる日本の面影』と、晩年に書かれた本人曰く最高傑作と述べた『神国日本―解釈の試み』の恐らく中間に時期に位置するであろうこの作品集が最も私の心に残りました。『日本の面影』ほど日本を過度に美化しすぎることもなく、『神国日本』ほど理屈だらけじゃなく、人の心に訴える情緒的な美しい文章が好きです。そして、この本は、古代の日本を静かに深く愛して、古代の日本の美しさをひたすらに愛を込めて描く一方、それが消えていく、彼の悲しさ、儚しさを感じます。
(私がこの本に引きつけられるのは日本人の美学の『儚しいものこそ美しい』からきてるかもしれない。)
印象に残ったところの一部を意訳しながら引用
「旧体制の下で育った日本人はこれ以上なく礼儀正しく善良で美しかった。しかし、近代化された新世代の青年の間からそうした美徳は消え失せてしまっている。」
「おばあさんはこれまでずっと、智慧を授ける慈悲の偉大な教師の法に従って生きてきた。いかなる悪事にも手を染めず、不断に善き行いに励んできた。たしかにこのような人は神の境涯まであと一歩と言えるだろう。・・・しかし、私はおばあさんがこれから先、少なくとも五万年くらいの間は生まれ変わってこないような気がする。おばあさんのような人を生み出した社会の仕組みはとうの昔に壊れてしまっている。そして、これから来る新しい日本では、おばあさんのような人は生きていけないだろうから。」
ハーンさんの本は、初期の頃の明らかに褒めすぎるほど褒めすぎな日本大賛美や、教育勅語を賛美した所が左翼や外国人の評価を大きく下げてしまうところなのですが、そこは考慮が必要ですが、それでも私は、彼の本は色々となにかを考えさせられるものがあるのではないかと思うのです。