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海は涸いていた (新潮文庫)

価格: ¥780
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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命を懸けてでも守るべきもの ★★★★★
生い立ちを隠し、異父妹や昔の仲間の幸せのみを祈って静かに暮らす主人公。
そんな男が、皮肉にも昔の仲間との再会をきっかけに事件に巻き込まれ、自分の過去とも交錯をして、大切なものを全て失う危機を迎える。
淡々と半ば世を捨てたような男に、大切な人を守るため、かつての激情が蘇る。
しかし、その激情は、かつても、そして今回も男を幸せから遠ざける結果を招くものだった・・・。
敏腕刑事(この刑事もなかなか魅力的な人物に描かれている。情はあるがクールな仕事人)の登場から結末に至るまでは、主人公の「大切な人を守りたい」という愛情や「状況を打開せねば」という焦燥が伝わってきて、一気に読ませる。
ラストは・・・涙なしでは読めない。
力作、一読の価値あり。
ハードボイルドは苦手だけど、これはすごい! ★★★★★
ハードボイルド小説が苦手で、そっち系の男が苦手なのに、何となく買ってしまい読んだのですが…。
感動しました。
伊勢を囲む人間関係の濃さ。彼の妹も多くの人に守られましたが、やくざな世界の中で彼もまた守られていたのだと胸が熱くなりました。
警部が伊勢追い詰めていくくだりには、「やめて」と言いそうになり、最後のシーンには涙が出ました。
作中にあった、伊勢の人生のたくさんの「もしも」。こういう道を選ばざるを得かった伊勢の人生の重さを感じさせます。
この作品の中で、一番好きな場面は、伊勢がある女性とホテルに入るところ。
セクシャルな表現はひとつもないのに、生々しい大人の情事を感じさせます。
行間を読ませる小説だと思いました。

上質なセンチメンタリズム ★★★★☆
作者の特徴なのか人物描写がとても硬く感じる。「天国への階段」でもこの違和感を持ちながら、結局大作を一気に読んだ。本書も同じで「硬質なサスペンス」。少し旧い人間像、展開。ありがちなストーリーながら黙々と読ませる力感。上質なセンチメンタリズム。渇いている時に読みたくなる一冊。
スリル満点 ★★★★★
この本は、ヤクザ側と刑事側の双方の視点に立って描かれたハードボイルド小説です。どちらの立場に立って読んでみても、切なさが感じられました。役所広司主演で「絆」というタイトルで、映画にもなった作品です。
ハードボイルドの定義はよくわからないが… ★★★★☆
■プライドを持つ。
■自分自身の道義性を貫く。
■愛に対しては愛で報いる。
■愛する者のためにはどんな犠牲も厭わない
■信頼を裏切らない。
■私利私欲を捨てる。

ハードボイルドの主人公に必要とされるものが以上の通りなら、この作品は間違いなくハードボイルドである。ハッピーエンドでなくとも、彼の人生の美学は貫徹されたと思う。しかし、『天国への階段』を読んだ後だったので、インパクトは今一つであった。したがって☆は4つ。