インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

地図のない道 (新潮文庫)

価格: ¥420
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
Amazon.co.jpで確認
優しいことばでの”千の風になって ” ★★★★★
今まで著者の本2冊にチャレンジしましたが途中で挫折してしまいました。塩野七生さんのようなマスキュランというか贅肉をそぎ落として緊張感のあるスタイルが好きだからです。しかし、この本を読んで須賀さんの真価が初めて分かりました。ご主人に死別されその傷心の日々に弱い人、しいたげられた人へ心を寄せる。そういった優しい心のエッセイ集で、とても綺麗な日本語で書かれています。漢字とひらがなの使い分けが見事です! こういう日本文も良いものとつくづく思いました。 「この金色にかこまれた聖母像がひとり、残った。 これだけでいい。そう思うと、ねむたくなるほどの安心感が私を包んだ。」あるうらさびれたベネチア気水湖の島の教会を訪れたときの感想です。みずみずしい香りある文章。文字でよむ癒しの本で、たまにはこんな本も良いなと心から思いました。
タイトルから魅力的 ★★★★☆
イタリアに住んでいた著者が、
普通の観光客や、もしかしてイタリア人でも
気がつくことのない地名や道の名前の
由来を調べている本です。

読んだ後に改めてタイトルを
見てみると「地図にない道」ではなかったかと
思ったが「地図のない道」であった。

改めて自分の読みの浅さと
須賀さんが本当に書きたかったことが
ご自身の半生も含んでいたのだと
気がついたのでした。

それにしても文章が美しいです。
ヴェネツィア心象風景 ★★★★★
「地図のない道」その一からその三、そして「ザッテレの河岸で」と、水の都ヴェネツィアをめぐる四つの文章が収められている。

たとえば、夫の死や家族の病気を経験した著者が、「道を歩いていても景色が目に入らず、意志だけに支えられて、からだを固くして日々を送っていた」時期におとずれたトルチェッロ島。
ヴェネツィアやリド島のかわいた盛夏を通りぬけてたどり着いた古い教会で、著者は聖母子のモザイク画に出会う。
神秘的な静謐にみちているだけでなく、(わたしの読み落としでなければ)ほかの作品ではあまり書かれることのない、著者自身の信仰をかいま見ることのできる美しい文章だ。

「ザッテレの河岸で」は、コルティジャーネとよばれた高級娼婦たちをめぐる、やや長めの随想。
小説的な文体で、テーマの核心にむけ著者が一歩ずつ近づいてゆくさまが描かれる。

「Rio degli incurabili(なおる見込みのない人たちの水路)」というふしぎな文字に著者が目をとめるところから、随想は書き起こされる。
その場所にはむかし、なおる見込みのない病気、つまり梅毒にかかった娼婦たちを収容するための病院があったのだ。
紆余曲折を経て、著者はその病院が形を変え、今もヴェネツィアに存在することを知る。
それらしき建物を探し当て、高い塀の周りを歩き回るが、入口がどうしても見つからない。
とうとうあきらめた著者はザッテレの河岸に出て、ある風景を目にする―

 *

運河と細い路地が入り組んだせせこましい町並みを抜け、河岸に出たときの、ふいに視界がひらけ、同時に心が世界にむけて広がっていく感じ。
そのすがすがしさを、著者は完璧な文体で読む者に伝えてくれる。
これから先、わたしはこのラストシーンを思い出すたびに、できることなら須賀敦子さんの書く小説、あるいは宗教観により深くふれることのできる文章を読みたかった、と身勝手な願いに胸を焦がすことをとめられないだろう。
秘められた深い悲しみ ★★★★★
 
 ユダヤ人ゲット、トルチェッロのモザイクの聖母像、<治療の見込みのない病人>、コルティジャーネ(高級娼婦)、レデントーレ…。
 在りし日の友人たちの思い出に導かれながら須賀敦子が描き出したヴェネツィアは、一般的なガイドブックが伝えるヴェネツィアとは、だいぶ趣を異にする。彼女のヴェネツィアを一言でいえば「深い悲しみと慰めの場所」。じつは、彼女が人生の一番辛い一時期をどうすることもできずに無為に過ごした場所が、ヴェネツィアであった。ここに表象されたヴェネツィアは、彼女自身の心象風景でもある。
 
文章が心にしみます ★★★★☆
今年になって須賀敦子さんの本を続けて読み始めたのだが、文章が本当にこちらの心にしみてくる。かなりひらがなの多い文章だが、心のままを誠実に書いているのがこちらに伝わってくる。

最近はイタリアというとパスタやグッチなどのブランドもばかりに関心が行きがちだが、須賀さんはイタリアの中でもいわゆる負け組(私はこの言葉大嫌いなのだが)の人たち、貧しい人やユダヤ人などに目を向ける。特にこの本ではローマやヴェネチアのユダヤ人と娼婦について語っている。そこらのイタリア本とは一線を画す、すばらしい本です。