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ヴェネツィアの宿 (文春文庫)

価格: ¥560
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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上質な時間 ★★★★★
この著者の本は、初めて読みました。
ヴェネツィアの小さな宿から想いを馳せる、父と母と父の愛人、幼き日の思い出、寄宿学校時代、疎開中に身を寄せた伯母の屋敷の事と、一章毎に時系列順ではない構成ですが、美しい文体で光と影と色彩を感じさせる描写力が見事でした。
子供の頃に知った、大人の秘密、母の反応、やがて死を目前にした病中の父への手土産を語ったオリエント急行の章は秀逸です。
ローマ・テルミニ駅のイタリア人の描写の表現力も的確だと思いました。
戦後の日本で、「女が女らしさを失わずに学問を続けていく事、結婚だけを人生の目標にしないで生きていく難しさ」に悩んだ、若い頃の著者。
そんな彼女の心を揺り動かした言葉「自分がカテドラルを建てる人間にならなければ意味がない。後略」のサン・テグジュベリの文章の一節にも感動しました。
ヴェネツィア、ローマ、パリ、フィレンツェと、著者が自ら辿り暮らし、自分の足で回った街の描写も見事ですが、秋の京都の浄瑠璃寺と弁当の一文も鮮やかです。
須賀敦子 静かなる魂の旅---永久保存ボックス/DVD+愛蔵本も購入しました。
エレガントな文体で綴る回想エッセイ ★☆☆☆☆
イタリアで長い年月を過ごし、後に日本で随筆家となった著者によるエッセイ集。

情報の吸収力、描写力が卓越しており、読み手にも相応の感受性が求められる。
絵画的なイメージを頭の中で自在に展開できる読者には合うかもしれない。

心なしか見栄のようなものが感じられて、それがいささか鼻に付いたが、そういった部分がさして気にならない読者もいるだろう。

めくれやすい性質のカバーで、片方が最初から外れかかっていた。
味わい深いエッセーです。 ★★★★★
著者の作品に触れるのは本書が始めてです。日本国内でのことだったり、海外でのことであったり…切なさとユーモア感が満載で夢中に読みました。修道院での生活も味のある修道女さんとの日々が繰り広げられていて自分には新鮮でした。外国語にも堪能な著者の姿にも憧れます。著者の夫を大切に思う気持にも見逃せないものを感じました。
光と影に包まれた道を歩く。ゆっくりと歩く。 ★★★★★
 寄宿舎生活を送ったカトリック学校時代のこと。フランスのパリに留学した時のこと。日本に戻ってしばらく働いた後、今度はイタリアのローマに留学した時のこと。イタリアの男性と結婚し、ミラノで暮らしていた時のこと。日本に帰った後、久しぶりにイタリアを訪れた時のこと。著者・須賀敦子(すが あつこ)が歩いてきた道のそうした折々、なつかしい店の中を覗くように差し挟まれる父と母の思い出。文章にきらめく光と影が美しく、ふっくらとした豊かさに満ちていて、著者が紡ぐ筆致に乗って、誘いこまれるように本の中を歩いて行きました。

 著者が案内して見せてくれる記憶の風景に、親しさとあたたかさとを感じながら頁をめくるうち、時折、はっと胸を衝かれる文章が目に飛び込んでくるのも印象的。
 <「ヨーロッパにいることで、きっとあなたのなかの日本は育ちつづけると思う。あなたが自分のカードをごまかしさえしなければ」> p.103
 <そのころ読んだ、サン=テグジュペリの文章が私を揺りうごかした。「自分がカテドラルを建てる人間にならなければ、意味がない。できあがったカテドラルのなかに、ぬくぬくと自分の席を得ようとする人間になってはだめだ」> p.146 ※この言葉の出自については、巻末の「解説」のなかで触れられています。
 <しかし、なによりも、自分だけの人生をもとめて故国をはなれ、一歩一歩手さぐりしながら歩いている彼女に、私は深い共感をおぼえた。> p.210
 <「ミラノなんて、おまえは、遠いところにばかり、ひとりで行ってしまう」> p.248

 「ヴェネツィアの宿」「夏のおわり」「寄宿学校」「カラが咲く庭」「夜半のうた声」「大聖堂まで」「レーニ街の家」「白い方丈」「カティアが歩いた道」「旅のむこう」「アスフォデロの野をわたって」「オリエント・エクスプレス」の十二のエッセイに吹き通う清やかな風の香り、凛としてしなやかな精神の深み。素敵だなあ。

 フェニーチェ劇場の広場に面したホテルに泊まった一夜、走馬燈が流れるように古い記憶がめぐる「ヴェネツィアの宿」、夢幻のような前半の数頁の美しさ。次の学生寮に移るまでの時間を、ひとり、ローマ終着駅でつぶす“私”の心細さにしんみりさせられた「カラが咲く庭」の一場面。京都の竹野夫人という人から届いた手紙が、異様な体験へと著者を巻き込む「白い方丈」の恐さ。特急列車“フライイング・スコッツマン”に乗って、スコットランドのエディンバラへの旅と、国際列車“オリエント・エクスプレス”にまつわる父の思い出が交錯する「オリエント・エクスプレス」。そして、本書の最後に置かれたその文章がぐるりとひとまわりして、最初の収録エッセイ「ヴェネツィアの宿」へと帰っていくところ。とりわけ忘れがたく、印象に残った文章と名場面です。

 ロンバルディア、カラブリア、プリアといったイタリアの地方名はじめ、ヨーロッパの都市の名前が結構出てきます。私は、アトラスの世界地図帳を引きながら、本書を読んでいきました。おかげで、イタリアの地理に少しだけ明るくなったかもしれない。そういえばイタリアの国って、人間の脚みたいな、靴みたいな形をしていますね。本書の中で実によく歩く人という印象を持った著者と、何か響き合うものがあるなあと、ふっと今、そんな気がしたのですが。

 本書の巻末、「彼女の、意志的なあの靴音」と題する関川夏央の文章もいいですねぇ。<友情をもとめながらも孤独を恐れない><温厚な表情の裏側にひそむ強いなにものか>を持った須賀敦子の人となりを伝えてくれる文章の、格調高く、きりりとしていること。この見事な解説文にも、ため息が出ました。
文化エッセイ ★★★★☆
イタリアと日本の文化比較。
昭和の女性文化。
ヨーロッパ各国の文化比較。

なにげない日常を描いたエッセイですが、
上質の文化論に感じます。

須賀さんの文書の持つ雰囲気が
とても良いです。