息づかいや体温まで
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夫から離れ、ビルの4階のワンフロアに住み始めた私と娘。
窓に囲まれ、からだに浴びてあまりある光がさしこむ。
屋上にあふれる水、隣の民家の屋根に落ちたおもちゃ、森に咲く桜、保育園に突然現れ娘を連れ去る夫、マンションから落ちて死ぬ子ども、空を赤く染めた工場の爆発―
光に満ちた部屋の周りで起きる出来事のひとつひとつが、私と結びついている。傷口が開き、赤い血が流れ、痛みが走る。
津島佑子さんは、自分で自分の傷口を開いて、血を浴びながら傷口を向こう側へ潜り抜け、再生を企てている。その行程の息づかいや体温まで感じることができる傑作。