全体は3部に分かれていて、第1部では熱伝導方程式や流体方程式などの具体的な現象の方程式をたてることを目的としています。数学専攻の人はそれらの定式化に曖昧さを感じるかもしれません。それ以外の人は変分法と多変数の微積分、簡単なテンソル代数などに慣れていないと途中で息切れしてしまうでしょう。
第2章では偏微分方程式の解き方を7種類紹介しています。数学色が強くなっているので、数学科以外の学部生は求積法と変数分離法だけは身につけておきたい。
第3部では偏微分方程式論を土台にした関数解析を論じています。難しい内容ですが、個人的には超関数の部分が面白かった。ここまでくるとかなりの解析学の知識が要求されます。
全体を通して問題は本文に付随する形でついているが解答はありません。全部を読み通すのはきついが、理工系学生なら第1部だけでも読んでおいて損はありません。実際、境界条件や応用例などで他書には見られない面白さがあり、数理物理学の一端も垣間見ることができます。
星4つなのは、もう少し定理の証明と式の導出を厳密にやってほしかった(証明がない定理もいくつかある)。