読み物としての面白さは無いけれど
★★★★★
ヘリオット先生の息子・ジム・ワイトさんによるヘリオット先生の伝記です。
派手な面白さや、ゴシップ的な部分はまったく無いけれど、それだけに、
父親や、家族の真実の姿を後世に残そうという、息子さんの強い決意と、
深い愛情を感じました。
いつも、悩みや苦悩を人には言えずに苦悩してきたヘリオット先生の姿…
その悩みのために、深いうつ状態にまでなってしまった先生…
でも、その先生を支えたのは、やはり家族でした。
ヘリオット先生の生き様は、深い真理を教えてくれているように思います。
人間は、ほかの生き物(人間や、動物も含めて)のことで悩むかもしれないけれど、
救いをさしのべてくれたり、喜びを与えてくれたりするのも、またその生き物たちなんだな…と思いました。
底抜けのお人よしである必要は無いけど、時には彼らに悩まされたり、苦笑したりしながらも、
彼らにとってベストの道を模索し、せいいっぱい努力しながら生きると言うことが、
幸福ということにつながるのかもしれない…と思いました。
有名になっても、生活が変わらなかった唯一の作家・ヘリオットの素顔
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たいした器具も無く触診が頼りで、経験がものをいう時代から、検体を取り、分析し、人間なみの
ケアが期待できる治療へと、獣医の世界も進化した。
同様に、その動物たちと人間との関係は、進化したのだろうか。
ブロイラーのように、より効率よく肥育させ、手間をかけずに生産される家畜は、現代では「経済動物」
という名前でよばれる。
家畜とはいえ、生き物相手に効率や手間を惜しむのは如何なものか。
手間ひまかけて育てれば、動物だって良い子に育つものだ。
願わくば原点に帰って、人間も、動物も愛情たっぷりに育ててもらいたい。
ヘリオットの作品を世の人々が愛した理由が、そこにある。
人を愛し、動物を愛し、ヨークシャーをこよなく愛したヘリオットの人物像が、息子の手によって
鮮やかに描きだされたこの本を、わたしはそう読んだ。