本当の意味でシェアードサービスと呼べるものは何か
★★★☆☆
・「シェアードサービスの管理会計」という題名の意味する限定的な範囲は
確かにカバーした書籍であると思います。
・ただし、事例を多く盛り込んでいると言われながらも、表層的な事例が多く、
全体的に大学の教科書的な印象の内容で金額的に高いように思います。
・SSCの一般的な分類や、会計上の取り扱いにはページを割いていますが、
本来的なSSCの課題については、つっこんだ検討ができておらず、そのため本当の意味での
SSCとは何かの考察については、検証度合いはそれほど高くないと感じました。
・企業がSSCを導入する時、組織体系まで含めて考え直すにあたって、少なくとも
下記の点まで含めた示唆を本書は提示すべきだと思います。
-SSCの定義が、業務を集中し見直し標準化しするということであれば、そもそも外販
できないレベルでの業務見直しと標準化がもたらす効果は、どれほど意味を持つものなのか。
-業務の見直しと標準化ということを定義においている以上、名目的にSSCと名乗っているものの、
本当の意味での業務見直しが十分にできているSSCと、その水準に到達していないSSCについての
議論が必要ではないか。その水準に達していないものはSSCと呼ぶことはできるのか。
-その違いは、自ら意思決定を行い、必要な交渉を行い進化し続ける意志と能力がある主体的なSSCと、
単に本社に言われたことをやっている受動的なSSCとの違いなのではないか。
・本質的な定義と課題の整理をしないままSSCという手法と言葉だけが踊れば、ひとまずシステムさえ
入れてしまえば、なんでもかんでもSSCという呼称が使われるのではないでしょうか。
手法が生きるためには本当の経営課題とリンクすることが必須条件に思われます。