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あめりか物語 (岩波文庫)

価格: ¥840
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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荷風の駄作 ★★★☆☆
著者の「ふらんす物語」が素晴らしかったので、大いに期待して読みました。前半は正直に言って読むに耐えません。高校の生徒の文集に載せたとしても見劣りがするような、読んでいて恥ずかしくなるほど下手なのです。

後半の作品は徐々に質が上がって行きます。荷風程の作家でも最初から名文は書けないし、名作は作れないのですね。

荷風をはじめて読むなら「ふらんす物語」をお勧めしたいと思います。この「あめりか物語」を先に読んでしまうと、荷風が嫌いになってしまうかもしれません。第一印象は大きいのです。

巻末の解説を担当された川本皓嗣さんも本作品に賛否両論があることを指摘しています。全く同感だったので氏の指摘は強く印象に残っています。
荷風の名文が、アメリカの不易な価値観を描き出していて、実におもしろいと感じた ★★★★★
 ひょんなことで荷風の「あめりか物語」には評者が出張で訪ねた街が多数含まれていて気になり、読んでみた次第。そこに描き出されているシアトル、セントルイス、ミシガン、ワシントンDCと渡仏直前まで住んだマンハッタンの風景として描かれている街の風情が、基本的には変わっていない感触がとても驚きであった。特にマンハッタンとDCに描かれている風景が、印象的だがセントルイスなどは歴史的景観保存もしっかりしているので、石畳や万博が開催された地域の風情などは百年を経たアメリカの風景の背後にある人々の営みになにか共通のものがいまも残っている。
 荷風の名文が、アメリカの不易な価値観を描き出していて、実におもしろいと感じた次第。
当時の移民の様子も ★★★★★
この小説の魅力は、ひとつには荷風の抜群の観察力と文章力の高さが上げられると思いますし、もう一つにはアメリカでの荷風の生活のみならず、当時の移民がどのような生活をしていたかを各章の端々からうかがい知ることが出来るという点です。
スクールに通って米国人小学生と一緒に英語で授業を受ける日本人、米国人の使役労働者(召使い)として働く日本人、あるいは夫婦で移民して妻だけが女郎として売り飛ばされる話を聞いたという箇所などは、当時の日本人が艱難辛苦の生活をしていたことを物語っています。
その後の様々な苦難を乗り越えた結果、今日の日系社会が存在しているということを思うと、感慨深い物があります。
荷風の目を通して、アメリカへ移民した日本人の生活の一端を知ることができる点でもこの作品は興味深い作品であると思いました。

荷風のロマン主義と文明批判の眼はアメリカで出来上がった ★★★★★
 永井荷風の約4年にわたるアメリカ滞在で、都会の汚濁と喧噪に、大陸の自然の多様性に、そして人情の機微に喚起されて得た表象を綴った短編集。荷風が、文明開化から一世代を隔てた時に、失われ行く日本文化とその対極としての西洋文化をしっかりとみる眼を持つに至るその経緯がこの作品に読みとれる。正確には、「ふらんす物語」をも読んで、と言うべきだが、荷風のロマン主義と文明批判の立場が、彼のアメリカ滞在中に出来上がったことが見て取れる。

 ほぼ百年前に書かれた、というところに、この作品を今読む意味があると思う。あふれかえる物や情報に埋まって、日本社会は、社会・経済を含めて、天井に突き当たり先行きが見えない。このような時こそ、荷風が外遊を通して身につけた冷めた眼、透した批判力、荷風文学の座標軸を、あらためて評価して良いと思う。そのような荷風の眼を通して、21世紀を迎えた日本の立っている位置が、グローバルな3次元空間に100年という時間軸を加えた四次元空間の中に見え始めると思うから。

 ついでに、この作品は、文庫本では、現在、講談社学芸文庫や新潮文庫でも購える。文庫本でも、岩波版の字が最も大きく、年配者にはありがたい。新潮文庫版は、字がやや大きいと共に、ルビが多い。岩波版は初版準拠。手に入りやすいこれら三種を比較して、字の違いにとどまらず、中身の違いをみるのも面白い。これは、どの版を買おうかと迷った時の感想。

若い荷風 ★★★★★
本書が谷崎潤一郎を刺激したことはあまりにも有名だ。こんなにも濃厚で色彩鮮かな作品が明治時代に書かれたとは信じられないくらい。