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文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

価格: ¥452
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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文鳥がお気に入り ★★★★☆
鈴木三重吉に言われて飼ってみた文鳥。
ただ飼えと言われたままに…と表現されておられるが
どことなくこの文鳥に心惹かれている漱石の心が
可愛らしくも思われる。

また苦しい闘病生活。どんな思いで吐いた血を眺めたのか
病人であることの孤独。それを思うといたたまれない。
冷静に自分の姿をも観察した名作品集だと思います。
多彩な作品群、玉石混淆なのでは ★★★☆☆
漱石の主な長編は大体読破したのだが、短編にはこれまでほとんど手を出してこないでいた。長編とはかなり異なる顔の漱石を見ることができた。全体を読んで一番印象に残ったのは、やはり「夢十夜」。夢をテーマにし、物語も夢幻的なものが多く、まさか漱石がこのような作品を書いていたとは思わなかった。ただ、本書の中で最も読み応えがあったのは、小説ではなく随筆と言える「思い出す事など」であった。これは晩年の漱石が病床で経験したことをほぼリアルタイムで書いたものである。生と死、人間と社会をまさに透徹した目で見つめた作品であり、味わい深い。当時の漱石は小説にほとんど関心を失っており、外国の学術書ばかりを読みふけっていたのも印象的。この時代の文豪は現代の作家と比べるべくもなくアカデミズムに精通していた。

ただ、本書に収められている他の作品は対して面白くなかった。高く評価されている「文鳥」も、私の感性にはあまり多くを訴えてこなかった。閉口したのは長々と続く「永日小品」。とりとめのない(と私には見える)文章が続くのみであり、意地悪な言い方をすれば、夏目漱石というネームバリューが無かったら誰も読まない作品だったと思う。
小品 ★★☆☆☆
表題作の文鳥を読んだとき、独特で新鮮な感じがしました。
読み終えた後、何とも言いようのない悲しさみたいなものが残りつつ、
次の作品に移りました。
ただ、私にはちょっと合わなくて、作品の半分まで読んだのですが、挫折してしまいました。
1作品、1、2ページで終わるものが多くて、しかもとりとめのない話のように感じてしまい、
読欲がうまれてこなかったです。

あと半分は、また気が向いたら読もうと思っています。
「小品」と云われるジャンルが合わないのか、他の長編を読んで決めるまでの
気持ちにはまだちょっと時間がかかりそう。

こころ、とか読んでみたいなと思っていたのですが、
いずれ、リベンジしてみたいと思います。

(2009.4読)
小品集。 ★★★★☆
目次
・文鳥
・夢十夜
・永日小品
・思い出すことなど
・ケーベル先生
・変な音
・手紙

『夢十夜』は連作短篇集、『永日小品』は特に連作ではない短篇集です。
物語性ではやはり『夢十夜』が最も面白いと思います。

『思い出すことなど』は作者の罹病体験記であり、かなり凄絶です。
病んだ作者が体に感じたこと・考えたことが事細かに記されています。

『ケーベル先生』は昔漱石が世話になったアイルランド人の先生の話、
『変な音』『手紙』はフツウの短篇です。

『文鳥』は……正直なところ、「文鳥を昔自分が好きだった女になぞらえた挙句に飼い殺した上で責任を家の人に転嫁する」
という筋書きに唸ってしまいました。作者の実体験でないことを祈りたい。
生々しい漱石の闘病生活描写(「思い出す事など」ほか) ★★★★★
「思い出す事など」(33編)と「変な音」(2編)では、明治43年8月修繕寺滞在中に胃潰瘍で吐血し、人事不省に陥った折の体験が描かれている(明治43年8月〜明治44年は朝日新聞への連載小説執筆はなく、その折のエッセイ)。

栄養摂取、消化薬、ペインクリニックなどが発達した昨今からみれば、想像できない程の医療技術の格差があり、骨や関節の痛みに耐えられない病臥中の漱石の苦痛の表現は生々しくも痛ましい。
新聞報道を見て友人知人からたくさんの見舞電報が届けられたのに励まされ生き延びれたという述懐もあり、長与胃腸病院の医者や看護婦の懸命の治療と看病への感謝、鏡子夫人との対話、朝日番記者の動きや裏話が 死線を彷徨った文豪の筆で語られている。

小説家というより思想家や心理学者のように透徹した観察と思考を通じて、大胆な表現で小説やエッセイを次々と発表していった漱石の源泉を知るのに欠かせない 興味深いエピソードがびっしり詰められている。

本書(新潮文庫)には、他にも「永日小品」「手紙」などが収録されている。