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逃亡〈下〉 (新潮文庫)

価格: ¥830
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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考えさせられる1冊 ★★★★★
太平洋戦争 日本敗戦を受け、B・C級戦犯者をモチーフにした小説です。
ストーリーの概略はすでにほかの方のレビューがありますので、あえて述べません。
本書は、敗戦によって受けた屈辱、理不尽な嫌疑に苦悩するごく普通の日本人像(元特高)と同時に、日本がかつて隣国等にしてきた蛮行が随所に表現され、戦争というものがもたらす「悲劇」が強烈に読み取れてきます。
敗戦国日本という観点、隣国の抗日感情という観点、人の尊厳という観点、はたまた、靖国問題、北朝鮮拉致問題等々、様々な想いを改めて考えさせてくれる1冊かと思います。
長編ですが一気に読めてしまい、胸が熱くなり涙が出てくる場面もかなり多いです。
さすが帚木描写の一言ですね!お薦めです。

蛇足ですが、偶然私は本書を読み終えた後、映画「私は貝になりたい」を観ました。
当該映画もB・C級戦犯を描いたもので、本書で出てくる施設や当時の生活風景が映像描写されているようで非常に親近感的感情が湧きます。そして本書と映画の結末が全く違った展開・・
衝撃的でした。
たまたまでしたが非常に面白いコラボレーションを感じました。
本書をこの様な形で読んでみるのもお薦めです!
戦犯 ★★★★☆
戦犯という題材の本です。。上巻は恐ろしくつらい場面が多かったが下巻は、逃亡後を書き綴ってあり、どんどん引き込まれた。
逃亡成功か死刑かと、ドキドキしながら最後のページで涙。
良かったのか悪かったのかは判断できませんが、個人的感情では、良かったと。もともと私個人の意見としては、戦犯などという言葉は存在しないと思っている。そもそも戦争に勝ち負けなどないと思うし、中にも書いてあるが、勝った国が負けた国を裁くなどということもおかしな話で。ありきたりだが戦争はあってはいけないもの。本当に考えさせられる本でした。後半、主人公が自問自答する箇所、戦争について思いをはせている箇所は、すべてを物語っている気がしました。是非一読ください。
『憲兵』の実態と戦犯逃れの逃亡記。 ★★★★★

【(上)巻、(下)巻共同じレビュー内容です。悪しからず。】

■ 【フィクション?ノンフィクション? 】
戦後55年。2000年に出版されたこの本の著者は、53歳
の戦後生まれ。この長編作品は、フィクション?ノンフィ
クション?描かれていることが、大変詳しく、かつ、リアリ
ティーを持っている。しかし、その答えは、下巻の巻末の
久保光彦氏の(あとがき)寄書で明かされております。

■ 【戦犯逃れの逃亡記 】
主人公は、香港(占領下)で(日本軍)憲兵だった「守田
征二」。大東亜戦争の敗戦を迎えるところから物語が始
まります。占領下での(日本)軍隊の略奪、焼打ち、凌
辱、レイプ、拷問など。それらを見逃し、現地密偵を使っ
たスパイ行為の頂点に立つ憲兵は、敗戦と共に、目の
敵であり「憲兵狩り」の標的です。辛うじて、日本に帰還
すると、今度は、占領軍のGHQの戦犯追跡に会いま
す。しかし、結局は巣鴨プリズンに収監され、そこでの生
活で終わります。

■ 【車は急に停まれない!軍・警察癒着 】
巣鴨プリズんへの収監前の警察の扱い、収監後の香港
移送への手続きの遅延ぶり、など軍と戦後警察の癒着
、敗戦時の、軍と官僚による責任逃れの一斉焚書、レッ
ドパージ、講和条約によるA級戦犯の釈放、元軍属(本
書の元憲兵守田も含まれる)への軍人恩給など、一連
の戦前の反省が中途半端に終わり、敗者自ら裁くことを
せず、戦犯自ら「世捨て人」にもならず、戦後政治の舵
取りをして今日に至っているのも残念ながら事実です。

■ 【『憲兵』は何をしたか? 】
本書で明されている、『憲兵』の記述は新鮮なものでし
た。恐らく、元憲兵の多くは、既に鬼籍に入られ、又、自
分達の行為は、戦後日本に帰還したものの他人に語れ
るものではないと思われます。著者は、恐らく、それらの
人々から貴重な体験談を元に、息をも吐かせぬ凡そ
1200ページの長編アクション小説に纏め上げております。

戦争の“愚か”さ ★★★★☆
戦争中憲兵(特高警察)として香港で厳しく治安維持にあたっていた主人公が敗戦後一転して戦犯に指名され、その理不尽さゆえ中国大陸から日本、そして日本各地を逃亡するという、文庫版で上下合計1200ページの大作でした。

97年の作品で柴田錬三郎賞を受賞しています。

原爆を投下して罪もない一般の人々を何十万人も殺したアメリカが罪を問われず、上官の命令で対日不満分子をはからずも手にかけてしまった者が、敗戦国ということで指名手配される。

作者はその不公平さ、理不尽さから戦争の愚かさを訴えているように思いました。

責任の所在が曖昧なこの国自体が虚ろな器なのだ ★★★★★
塩野七生氏の著作の一つである「サイレント・マイノリティ」という言葉が、本書を読んでいる間に何度も頭に浮かんだ。主人公の母トメのように気丈かつ声高に彼を擁護する人物も登場するが、妻子は生活を必死に維持することで彼を支え、逃亡を助ける元同僚の多くは自らが犯した「罪」をどう理解すべきか苦しみながら、決して声を上げることはない。それは、戦中の軍隊組織や戦後の反論が許されない世情に表される、常に現実から逃避していた当時の日本社会によって沈黙せざるを得なかった人々の姿である。

レビューのタイトルは、本書の終盤で主人公が戦犯とはいかなる存在か、あるいは自分が犯したとされる罪状の根源を振り返る場面の一文である。巣鴨の独房でこの結論に至った人物が本当にいたかもしれな!い。だとすると、終戦から半世紀以上を経た現在でもこの文章で表せる社会とは、一体何を成し遂げたと胸を張って言えるのだろうか。