本書前半では、クレザンジェの暗躍が描かれています。そりゃ、悪役の活躍も描く必要はあるのでしょうが、読者はショパンやドラクロワを見たいのであって、延々とクレザンジェのシーンが続くのはさすがに疲れました。
元々、単行本で第1部、第2部の2冊で発行されていたのを文庫化にあたり4冊に分けたという構造上仕方のないことなのでしょうが。
前巻では小難しい芸術論が長く続いていたのですが、本巻『葬送 (第1部下)』では出来事によって物語が動きます。クレザンジェとソランジュの結婚問題です。
それぞれの思惑が絡み合った結婚劇の顛末は、ショパンとサンド夫人の関係にも大きな影響を与えることとなります。
内容からいって、暗澹たる気分になってしまうかもしれませんが、最後にはドラクロワが大作を完成させる場面があります。その時の芸術家の達成感を壮大に描写して、第1部を閉じています。