女性が描いた逆『ファウスト』的評論。
★★★★★
日本SF大賞を受賞した、小谷真理氏のSF評論。小谷氏というと難解なイメージがあって、今まで読んだことがなかったのだが、読んでみると、これが非常に面白いです。まさに《快刀、乱麻を断つ》勢いで、男女性差を明解に分析する筆致は、娯楽としても楽しいです。それに、本書のメインテーマである、《女性状無意識》という概念は、非常に画期的だと思いました。見当はずれの感想かも知れませんが、ゲーテの傑作『ファウスト』を、女性の視点から描き直したような印象を受けました。SFという枠に捉われることなく、広く読まれるべき作品だと思います。(追記:この作品は、単なる批評ではなく、批評という型式を使って描かれた、独立した《SF作品》としても、傑作だと思います。)