山椒大夫について
★★★★☆
関西にある山椒大夫の歴史巡りをするに当たり
アニメ、映画、小説とすべて目を通しました。
本来は山椒大夫の首を切り落とすなどの怖い復讐劇物語なのですが
どのメディアも家族愛を中心の題材として描いているために
忠臣蔵のような復讐劇は陰を落としています。
個人的にはもう少し復讐劇をメインに描いた小説も読んでみたかったです。
森鴎外の小説によって広く知られるようになったこの物語ですが
子供にはアニメ版もありおすすめです。
おまけ程度に読みましたが「高瀬舟」もせつなくて良かったです。
好きですね。
★★★★☆
よく引き締まった言語感覚が素晴らしいと思います。淡々と、また整然とした文体は非常に読み易いです。
私個人は鴎外先生の口語の文体が日本の作家の文体の中で一番好きです。感情的な文章が苦手だという人に特にオススメです。
量感に富んだ文章が好きだ、いう人は物足りなく感じるかもしれませんが。
鴎外先生の博識さゆえに、衒学のきらいはそれなりにあるのですが、
威張り方までもが淡々としているので、厭味ったらしくありません。
「杯」といい、「普請中」といい、「護持院原の敵討」といい、
鴎外先生は地味に凛々しくて可愛らしい女を描くのに長けていたように思えます。
「護持院原の敵討」の宇平の台詞、「高瀬舟」の喜助の台詞もジンと来ますね。
そして「二人の友」のF君と安国寺さん、どれだけ鴎外先生が好きなんだよ(笑)
語り継がれるべき古典
★★★★★
端的に本質をつっついてくる話が
面白い舞台設定のもとで描かれていて
非常にすっきりします。
対照的に扱っている内容はすっきりしないわけですが。
生意気ですが筆者の頭の良さ、明晰さがにじみ出るような
そんな短編でした。
古いですが内容は古くありません。
ぜひ読み継がれるべき。
京都に行ったときに川を感じて
★★★★☆
京都市内を流れる高瀬川。安藤忠雄さんの工夫された川沿いの店舗も発見できました。短編で少し読みにくい内容ですが、声に出して読むとしみいるようなことを受けます。安楽死というテーマをどのように考えるかという昔ながらのテーマをやるせない気持ちにさせながら、一方で、人間としてあるべき姿、潔さを感じるものでした。また読むでしょう。この短編は。
大名作だが
★★★★★
何十回も読み直した本である。特に山椒大夫。日本人の琴線にふれる、なにか言い難い深い闇のようなものを感じる。しかし、である。これだけでは足りないのだ。何が足りないか。極端な例を持ち出して本当に申し訳ないが、現代の日本で苦しみのあまり電車に飛び込もうかと考える人がいたとして、その人にはこの本の世界観は助けにならない気がする。諦念ということは成熟のために本当に大事だ。しかし諦念だけでは生きていくことはできない。