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権現の踊り子 (講談社文庫)

価格: ¥580
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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   第28回川端康成文学賞を受賞した「権現の踊り子」ほか「鶴の壺」「矢細君のストーン」「工夫の減さん」「ふくみ笑い」「逆水戸」の全6編からなる短編集。1編1編が短いがゆえの余韻を残しつつ、テンポ良く進んでいく。

 「俺は昔から権現が好きだった。ゴンゲン。響きが素敵」。「おばはん」から権現市ができたと聞き、剃刀を買いに出かけた「俺」。だが市と祭りは来週かららしく、主催者の男に頼まれて準備中の料理を味見することになる。ぺかぺかのプラスチックカップに入ったワイン、羊の肋(あばら)肉、「ハンバーカレー」…。そして「もはや恥辱そのもの」の「権現躑躅踊り」を披露されるに至り、「俺」の困惑はいよいよ深まっていく(「権現の踊り子」)。

   大切な壺を返すため入院中の友人を訪ねるが、病院にたどり着けない男の話(「鶴の壺」)。スーパーの定員や警察官、信頼していた友人までもが始めた「ふくみ笑い」に追い詰められていく男の話(「ふくみ笑い」)。荒唐無稽な話ばかりだが、そこに漂う焦燥感と息苦しさは、読むほどに読者自身の体験と重なっていく。深刻な状況に同居する笑いを、町田は逃さずにすくいとり、リズム感あふれる言葉でさらにふくらませてみせる。

 「逆水戸」は、テレビの時代劇好きという町田らしく、「水戸黄門」とおぼしき物語を下敷きにした時代小説。現代を離れ、江戸を舞台にしたこの小説に大笑いしながら全6編が終わる、という構成もいい。(門倉紫麻)

食わず嫌いはやめにして… ★★★★★
町田康食わず嫌いの人に、先ず薦めるのがこの本。短編集だし、話のテイストもバラエティーに富んでいるから。
わかりやすくて笑える話が好きな人には収録作の「逆水戸から読んで!」と言い添える(もしくは「逆水戸だけでも読んでみて!」と)。わかりやすくなくても笑えなくてもワケわかんなくても大丈夫な人(で、町田に対し何やら偏見?オソレ?を抱いている人)には「とにかく好きなやつだけ読んでみて!」と言い添える。

だって、こんなに面白い町田康を読まないなんて勿体ない!
この方法で、私は身のまわりに町田ファンを増殖させている(そして「町田、オモロイねぇ」「タマランねぇ」と喜びを分かち合うのだよ、グフフ)。

まだ町田を読んだことのないあなた、読んではみたいが二の足を踏んでいるあなた、まずはこの本からはじめて町田作品に入り込んで下さい。
なお、私個人の町田イチオシ作品は『告白』(これは、すごい本だ)。他の本も、面白いものだらけ。町田の小説を読むと他の本(純文学&準文学)がつまらなく感じてしまう…これは、コマッタことではあるのだがネ。
なにやってんだまったく。 ★★★★★
「逆水戸」冒頭より

 誰もがむやみに人を殴りたくなるような貞享三年四月。腐ったような里山に新緑のぼけが芽吹いていやがった。
 田だか野だか分らぬあほらしい草原があってそのうえ間抜けなクリークがありやがった。なめているのか。

 町田節全開で始まるこの短編、時代物なのに登場人物がみんな「パンク」です。
いっちゃってます。

なんやかや、色々あって、最後は、わちゃーな結末。そして締めの言葉がまたスゴイ!まあ読んでみてください。
面白い、ノリ、勢いとかだけじゃない技巧性の高さ ★★★★☆
上手い作家だと思う。
ドライブ感とかリズムとか、笑いとかノリとかが目立つが、実のところすごい文学的技巧派。ほんとうに「文学」を良く勉強してらっしゃるな、と関心させられる。
その点が、他の、ノリだけの若手の書き殴り系とは明らかに一線を画しており、玄人集にも高い評価を受けているゆえんだと思う。
計算しつくされ、言葉も選び抜かれ、清廉された文体で書かれている。
なおかつ個性的、独自性があるというのは、ものすごく貴重。
天才、秀才、どちらにしても、すげーとしか言いようがない、書き手だと思う。
「ふくみ笑い」と「工夫の減さん」 ★★★★★
 収録作品のうち、二篇について書く。
 現代の「のっぺらぼう」、と呼ぶべきか、「ふくみ笑い」。
 検閲のことを考えた。検閲なんて、いまの時代の文学に関係ない、そりゃ、そうなんだけど、これに近いことは日常生活で頻繁に起こっていると私は思う。以下に書くことは、あくまでたとえ話である。たとえば、そう、社員同士で、社長か役員かの噂話をする、もちろん悪いほうだが、そこにその噂の当人が通りかかる、なに、しゃべってんだい、と当人が言う、そこでその噂話をしてる人たちは、阿吽の呼吸ともいうべき、「ふくみ笑い」を交し合い、噂されてる当人じゃなく、別の人のことを言ってるんだ、と噂の当人に思い込ませようとする、話をすげかえちまう、すっとぼける、ごまかしやがる、噂された当人は、何か飲み込めないものを感じ、その日一日を鬱々と暮すことになる、まったくもって、「ふくみ笑い」ほどの不気味、不可解な笑いはない。まったくもって、町田さんには、やられた。

 「工夫の減さん」。私にも、ちょこっと、思い当たる節がある。明日楽するために、今日苦労するのだ、と気合を入れて仕事をする。はじめのうちは、うきうき楽しいのであるが、しだいに、どんな因果で、わしは、明日の仕事を今日せんければならんのだ、明日のことを思い煩うな、とあの人が言っていたのではなかったか、まったく、あほらしい、明日のこた、明日やりゃいいのだ、やめっちまおうかな、と思うのだが、やはり、何の因果か、これが、やめられぬのである、しまったことになってしまった、と思うのだが、どうしようもねえんである。まったくもって、わしの工夫は、諸悪の本である、まったくもって、町田さんにはやられた。
快か不快かといえば不快 ★★★☆☆
「ふくみ笑」いは「けものがれ、俺らの猿と」のような陰鬱として粘着質で多湿、展開も不条理極まりない、町田作品の中ではあまり好きではない方の文章。「石井君のストーン」「工夫の減さん」は良かった。特に「減さん」はその不器用な生き様にホロッときた。